監査論では監査の考え方、監査手続を学びます。
しかし、監査法人での実務を知るという意味では、やはり物足りない感があります。
本記事では新人会計士や会計士受験生が知識として習得した監査手続と監査実務を、
結びつけることができるよう、一年間の監査業務の実務の流れを具体的に説明します。
はじめに
公認会計士試験の監査論では監査の手続を学ぶことになります。
監査論ではその名の通り、監査がどのように進められるのかについてを学びます。
監査手続にはどんなものがあるのか、監査はどんな考え方に基づいて実施されるのか等です。
監査法人に入った後、実務で必要となる知識をこの科目を通して学ぶのです。
もちろん、いずれも非常に重要な知識であることは間違いありません。
しかし、一年間の監査業務の実務について学ぶ機会はあまり多くないというのが実情です。
何かを学ぶにあたって、”自分が今どこにいるのか”ということを意識するためにも、
本記事で一年間の監査業務の流れを把握しておきましょう。
以下では、標準的な3月決算の上場会社をモデルに説明します。
勉強すんのはええけど、木を見て森を見ずはあかんで。
お、ええこと言うやん。
6月中旬~7月中旬-1年間の監査の始まり~四半期レビューの準備
上場会社の監査の一年間は6月下旬の有価証券報告書の公表をもって終わります。
そして新年度の監査業務は、前年度の監査業務と同時並行的に6月にスタートします。
監査業務の終わりの時期と始まりの時期は半月ぐらいオーバーラップするということです。
監査は計画から始まります。
しかし一方で、クライアントでは6月30日をもって新年度の第1四半期が終わります。
ということは7月には第1四半期の四半期レビューを実施しないといけません。
四半期レビューは監査ではありませんので、実施する手続きは監査よりもずっと少ないです。
しかしそうは言っても、以下のような項目は年度監査ともリンクしてきます。
- 重要性の金額 - いくら以上を重要な間違いとするかの金額基準
- 財務諸表のどこを重点的にチェックするかという、基本的な戦略
特に”特別な検討を要するリスク”について、暫定で決めておきます。
なので四半期レビューの段階で、年度監査のことを見据えてこれらも暫定で計画しておきます。
ちなみに、6月後半から7月前半は監査法人職員の”休み頃”です。
新年度の計画作業があるとは言え、この時期1~2週間程度のまとまった休みが取れます。
めっちゃ休めるやん。
有給は取れる時に取っとかんとな。
7月中旬~8月初旬-第1四半期レビュー
この時期は第1四半期レビューです。
四半期レビューの往査はだいたい2週間から長くて3週間ぐらいです。
その間、クライアントに往査してヒアリングを中心とした手続きを実施します。
あと例えば、4月1日時点で組織再編をしていたり、連結範囲が変わっていたりといった、
年初のトピックがある場合は、この第1四半期レビューの時に、チェックしてしまいます。
レビューは監査より簡易な手続きとは言え、組織再編や連結範囲などのトピックは、
レビューであっても監査であっても、重要度に差が無いからです。
第1四半期レビューの終わりは、四半期報告書が公表される8月の2週目ぐらいです。
8月中旬-夏休み
レビューが終わると夏休みです。
夏休みの時期も有給休暇の取り頃ですので、みんな結構がっつり休みます。
例えば、2019年であれば最大で8月9日~8月25日ぐらいまで休むことも可能と言えば可能です。
法人の一斉夏休み1週間と有給を1週間+αみたいな感じですね。
え、また休むん?
あかんか?
8月後半~12月 - 監査計画の策定
8月後半からいよいよ本格的に年度監査の手続が始動します。
監査は監査計画から。
この時期に1年間(といってもすでに2ヶ月ほど経過していますが)の監査手続を策定します。
まず監査計画の前段階として、クライアントのことをがっつり理解しなければなりません。
クライアントのことをわかっていないと、監査計画なんか立てられないでしょ!ということです。
逆に言えばクライアントの業界や、商売の特徴、管理体制、システム、損益や財政状態のことを、
深くわかっていれば、どこに間違いが起こるかな?っていうことが想像しやすくなるのです。
そして、クライアントの理解を元に以下のようなことを順次決めていきます。
- 重要性の金額(第1四半期の時に決めた重要性の金額のブラッシュアップです)
- どの勘定科目が大事で、どの勘定科目が大事でないか
- 連結会社について、どの子会社にどのような手続きを実施するか
- 当期の監査のトピック事項への対応方針
- 実査・立会・確認の計画
- クライアントの内部統制の検証範囲
実査立会確認については以下の記事もどうぞ。
ざっくりですが、ここまでが監査計画の策定です。
とは言っても、監査計画には”不断の修正作業”が付きまといます。
計画は一度立てても、1年を通して微調整を重ねていくんですね。
なので実際には、監査計画の策定と並行して、実際の監査手続を進めていきます。
(次回に続く)
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