こんにちは原田です。
猫と学ぶ経営管理の第13話をお届けします。
今回は簿記の処理のファジー(曖昧)な部分の話です。
簿記では、事実が一つでも、
処理の内容が異なることがよくあります。
それをきちんと判断することが、
“簿記を理解している”ということでもあるのです。
原田会計の招きネコ、マネ
原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)
誰がどんな株式を買ったのか、それが問題だ
ひで:突然ですが問題です!デデン!
マネ:好きやなそれ。
ひで:A社は、とある会社B社の株式を1,000万円で買いました。
この時この株式はどの勘定科目に計上するでしょうか。
マネ:ん?株式やろ?えーと、勘定科目の一覧見てええか?
えーと、有価証券、流動資産の有価証券やろ?
ひで:では条件を追加します。
このB社株式を取得することにより、B社はA社の子会社になりました。
これでどや。
マネ:んー。株式は株式やから有価証券ちゃうんか?
ひで:その手元にある勘定科目一覧もっとちゃんと見てみ?
マネ:んー?
・・・・・・・・・
お、これのことか!子会社株式やな?
ひで:せいかーい。
マネ:で、これがなんなん?
ひで:え?
マネ:え?
簿記では事実と処理が1対多
ひで:なんなんって、お前間違えてたやん。
マネ:いや、間違えてたんはわかったけど、何が言いたかったん?
有価証券は流動資産の有価証券だけじゃなくて、
子会社株式の可能性もあるっていうことはわかったけど、
それだけが言いたいことやなかったんやろ?
ひで:その通り。
株式に限らず、簿記においては、事実と処理が1対1とは限らへんねん。
マネ:また難しい言い方するー。
ひで:そのまんまやがな。
“B社の株式を1,000万円で買った”
これが事実。
せやけど、簿記の考え方では、
- A社が例えば株式のトレーディングを生業にしている会社の場合
→流動資産の中の”有価証券”。もっと言うと”売買目的有価証券”。 - 株式の取得によりB社がA社の子会社になる場合
→固定資産の中の投資その他の資産の中の”関係会社株式” - 1と2以外の場合
→固定資産の中の投資その他の資産の中の”その他有価証券”
つまり、一つの事実に対して、簿記上の処理は3つある。
マネ:ふむ。
つまりこの有価証券みたいな1対多の関係が他にもあるっていうことやな?
ひで:イエースイエース。
事実は一つでも、状況によって処理は大違い
ひで:例えば、建物を1億円で買いました。
これやとどう?
マネ:んーーーーーーー。
有形固定資産の建物で計上するしかなくない?
ひで:ノーノーノー。
じゃあこの会社が不動産会社で、
買った建物がお客さんに売る用の建物やったとしたら?
マネ:あー!棚卸資産か!
ひで:イエースイエース。
これは業種によって計上する勘定科目が変わるパターン。
さっきの売買目的有価証券も同じな。
同じパターンで言うと、
“作業服を買いました”
この場合は、販売用の作業服やったら当然棚卸資産やし、
工場の従業員が身に着ける作業服やったら貯蔵品。
他にも、
“建物の外壁を修理してもらい、500万円を支払いました”
こんなのもある。
マネ:えー、これは修理やから、修繕費一択とちゃうん???
ひで:ちゃうねんなー。
細かいことは省くけど、
資本的支出と収益的支出っていう考え方があんねん。
資本的支出っていうのは、修理っていうより、
ほぼ新しいものを買ったのと同じっていう考え方。
例えば、外壁の修理をした時に、
元々の外壁よりも、防水効果とかがグレードアップされてるような場合に、
それはもはや修理じゃないよねっていうことで、
建物勘定で計上せなあかんねん。
一方、収益的支出っていうのが経費にあたるんやけど、これはまさに修理。
元の状態に戻すための作業やったよねっていう考え方。
この場合は修繕費で計上することになる。
マネ:こんなん、判断がめっちゃあいまいやん?
ひで:ある程度の指針はあるんやけど、
指針通りにはなかなか判断できひんこともやっぱりあるで。
マネ:これも会計が”判断の産物”って言われる理由の一つなんか?
ひで:そうかもしれんなぁ。
いずれにせよ、事実だけを追っかけても、
簿記上、会計上の正解は出んってこっちゃ。
コメント