【第14話】4年落ちのベンツは本当に節税になる?

猫と学ぶ経営管理
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こんにちは原田です。

猫と学ぶ経営管理の第14話をお届けします。

今回は、中古の高級車を利用した節税の話です。

巷では、この方法が節税の定番として紹介されていますが、

“キャッシュをどれだけ多く残すか”という観点で考えると、

必ずしもこの方法は節税とは言えないのではないかと考えます。

原田会計の招きネコ、マネ

原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)


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新車でも中古車でも節税効果は同じ?

マネ:ベンツ、ベンツ、BMW、ベンツ、レクサス、ベンツ、ベンツ、、、

ひで:何?ベンツ乗りたいん?

マネ:そうじゃなくて、クライアントの社長がどんな車乗ってるのか統計取っててん。

ひで:なぜそんなことを・・・・・

マネ:ほら、経営者ってベンツに乗ってるイメージ強いやん?

ほんまにそうなんかなーって思って。

ひで:確かに多いな。

マネ:ほんで、調べてみたら実際多いし。

そんなにベンツええかなぁ?

ひで:確かにステータスにはなる。

せやけど、経営者がベンツに乗る真の理由は必ずしもそこではない。

知ってる?

マネ:いや、知らん。もしかして節税?

ひで:そう。正解。節税のため。と言われている。

マネ:「と言われている」ってどういうこと?

ひで:まず、”節税のために購入される外車は4年落ちの中古車である”っていう前提がある。

マネ:どういうこと?

ひで:新車の耐用年数って6年やねん。

ということは1,000万円のベンツを新車で買ったとすると、

定額法の場合、減価償却費は1年あたり約166万円。

つまり、1000万円の新車のベンツの節税効果は166万円×6年間。

(減価償却が分からない人は↓の記事をどうぞー)

【第18話】固定資産を買う・使う・売る
事業経営で固定資産は必ずといっていいほど出てきます。 そして、固定資産を買うのも使うのも売るのも、 特有の知識が無ければ帳簿に付けることができません。 税金計算にも影響してきますので、 損しないようにしっかり覚えておきましょう。

マネ:うん、まぁ、そうなるわな。

1年あたり166万円の節税効果が大きいとみるか小さいとみるかは知らんけど。

ひで:ところが、4年落ちの車の耐用年数はたった2年やねん。

詳しい計算は省略するけど。

ということは、仮に同じ1,000万円のベンツを4年落ちで買ったとすると、

節税効果は500万円×2年間になる。

マネ:へー。中古やと耐用年数が短くなるんか。

確かにこれやと166万円の3倍やから、

新車に比べたら節税効果は大きいな。

マネ:でもやで?会計のこと最近勉強してるからわかったんやけど、

新車にしろ中古にしろ、車買っても節税になってなくない?

ひで:お、よく勉強してるな。

マネ:だって、そうやん。

会社の利益創出能力が6年間ずっと同じ、例えば3,000万円やとしたら、

新車の場合は節税後の利益額は6年間ずっと2,834万円。

中古の場合は最初の2年間は2,500万円になるけど、

後の4年間は3,000万円やん。

どっちにしても6年間の利益額合計は17,000万円で、

6年間の税額は、税率30%として、合計で5,100万円。

ほら、長い目で見たら何も変わらへんやん。

ひで:言うてることはだいたいあってる。ただ、詰めが甘い。

マネ:むぅ。

節税効果って何?キャッシュ減ってますけど?

ひで:何が甘いかっていうと、

結局のところ会社にどれだけのキャッシュが残るのかっていう点に触れてへんところなんやわ。

誤解を恐れずに言えば、

世の社長さんたちの当面の目標は手元のキャッシュを増やすことやろ?

税金を払いたくない、節税したいっていうのは要するにそういうことやん。

ということは、節税節税言うけど、どれだけ節税効果があったかっていうのは、

最終的にはどれだけ手元に多くのキャッシュが残ったかっていうことと同じ意味な。

そう考えると、マネの考えに足りてないのは、ベンツの売却価格な。

それと、6年間あるから、中古の場合はあと2回買い替えができる。

ほんまは維持費・修繕費の話とかもあるんやけど、

結構細かい話やし今日のところはまぁええやろ。

この条件でキャッシュの動きを見てみるとどうなるか。

減価償却は定額法。税率は全部30%で計算な。

(天の声:ちなみに定率法でも結果は同じです)

あと、売却価格については、

1年で10%ずつ買取価格が減少していくっていう前提で計算するで。

新車の場合

  1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
購入価格 ▲1,000           ▲1,000
節税効果 50(*1) 50(*1) 50(*1) 50(*1) 50(*1) 50(*1) 300
売却価格           400(*2) 400
税金負担           ▲120(*3) ▲120
合計 ▲950 50 50 50 50 50 ▲420

*1: 減価償却費による税金の減額 1,000÷6=166→166×30%=50

*2: 1,000-1,000×10%×6年=400

*3: 売却益から生じる税金の負担部分 売却価格400-車の簿価0=売却益400
売却益400×30%=120
車の簿価が0なのは、減価償却が終わっているため。

ひで:これが新車の場合のキャッシュの動き。

6年間のキャッシュの動きを全部合計すると、▲420万円

つまり、6年間で420万円を投じてベンツというステータスを買ったわけや。

次に中古車の場合。

  1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
購入価格 ▲1,000   ▲1,000   ▲1,000   ▲3,000
節税効果 150(*1) 150(*1) 150(*1) 150(*1) 150(*1) 150(*1) 900
売却価格   800(*2)   800(*2)   800(*2) 2,400
税金負担   ▲240(*3)   ▲240(*3)   ▲240(*3) ▲720
合計 ▲850 710 ▲850 710 ▲850 710 ▲420

*1: 減価償却費による税金の減額 1,000÷2=500→500×30%=150

*2: 1,000-1,000×10%×2年=800

*3: 売却益から生じる税金の負担部分 売却価格800-車の簿価0=売却益800
売却益800×30%=240
車の簿価が0なのは、減価償却が終わっているため。

ひで:これが中古車の場合のキャッシュの動き。

6年間のキャッシュの動きを全部合計すると、▲420万円

本当の節税とは何なのか

マネ:なんと。まったく一緒やん。新車と中古車。

ひで:今回の計算の前提を使った場合はな。

中古車の買取価格なんかもっと上下あるから。

せやけど、理論上は一応こうなる。

マネ:むしろ、ずっと4年落ち以下の車しか乗ってられへん中古車より、

最初の内は綺麗な車に乗れる新車のパターンの方が良いっていう見方すらあるやん。

ひで:しかも、説明省いたけど維持費・修繕費の話もあるしな。

ていうか、もっと大事なことに気づかへん?

マネ:ん?何?

ひで:新車にしろ中古車にしろ、

6年間で見た時のキャッシュはマイナスなんやわ。

マネ:あー、なるほど。

えーと、6年間でマイナス420万円やから、

ベンツに乗ることで何らかのプラスの効果が420万円分以上無い限り、

ベンツなんか買わへん方が良いって言うことか。

ひで:ベンツなんかっていうか、不要な車は買うべきじゃない

ほんまにキャッシュを残したいんやったら車なんか買わんかったらいいねん。

車は必要やけど、高級車じゃなくていい、

やっすい車でいいって言うんなら、コンパクトカーでええわけよ。

逆に、ベンツに乗りたい!ベンツに乗るのが夢やったんや!

って思うんやったら買ったらええと思うで。

せやけど、そうなったらもはやそこに”節税”っていう概念は必要ないやん。

マネ:ということは?

ひで:結論”必要なものを必要なだけ買いましょう”やな。

それが一番キャッシュを多く残す方法なんやで。

補足

4年落ちベンツの購入は節税にならないというような論調で来ておりますが、

限定的ではあるものの、本当の意味での節税になる場面もあります。

どういう場面かと言うと、

“当期は利益が出る予定だが、来期は赤字となるのがわかっている”という状況です。

上記の例は減価償却を定額法で計算しているので、

中古車は500万円ずつ2年間で償却しますが、

定率法の場合は1年目で1,000万円全額を損金にすることができます。

従って、当期は3,000万円の利益が出る予定だが、

来期は800万円の赤字の予定ということであれば、

4年落ちベンツを利用することで当期の利益を2,000万円に圧縮し、

来期は売却益でマイナス800万円を±0にすることが可能となります。

この場合、2年トータルの税金が安くなっているのがわかっていただけると思います。

しかし、業績をこのように確実に見通せる場面などそうそうないはずですので、

やはり、中古高級車を本当の意味での節税に使うというのは無理があると私は考えます。

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