こんにちは原田です。
猫と学ぶ簿記超入門 第12話をお届けします。
本日は実務での売上と商品仕入に係る仕訳の考え方をご説明します。
売上・仕入と一口に言っても、複数の方法があり、
簿記の入門書などでは、それらがあたかも実務現場で、
“均等に”扱われているかのように記載されています。
しかし実際にはほぼ一択ですので、本日ご紹介する部分だけを
覚えておけば問題ありません。
登場猫物と登場人物
前回のお話
ひで:さてと、今日は売上と仕入、
つまり本業中の本業の部分をどうやって記帳するのかっていう話するで。
マネ:そうそう、そういう話が聴きたいねん。
ひで:すまんな、今まで理論的なところばっかりやってきて。
マネ:おれは別に簿記検定に受かりたいわけやなくて、
ちゃうちゅーるが欲しいだけやからな。
ひで:せやんな。ほな早速いこか。
売上・仕入処理の3つの選択肢
ひで:といっても、やっぱり最初は理論からやで?
なんでかっていうと、売上と仕入の仕訳を切る方法も一つやないからな。
マネ:え?そうなん?選ぶ方法によって結果が変わるってこと?
ひで:いや、最終的な結果、つまり出来上がりの貸借対象用(以下B/S)と
損益計算書(以下P/L)は変わらへんねん。
やけど、そこに至る過程と手続きが変わってくる。
やから、とりあえず、どんな記帳の方法があるのか知っとかんとどうにもならんやろ?
マネ:うん、、、ほな、どうぞ、、、
ひで:ハイ、ヨロコンデ。
あんな、売上・仕入の代表的な記帳方法は大きく3つあんねん。
- 売上原価対立法
- 三分法
- 分記法
ひで:名前なんかほんまはどうでもええねんけど、
名前無いとどれがどれかわからんようなるからな。
ちなみに3つ紹介しといてなんやけど、
分記法は実務ではまず使わへんから説明せーへんで。
マネ:うん、実務でいらん知識は不要。
ひで:というわけで、まず売上原価対立法からいこか。
売上原価対立法
ひで:売上原価対立法っていうのはな、平たく言うと、
商品を仕入れた時は”商品勘定”で受けて、
商品を売った時に、商品勘定から”売上原価勘定”に振り替える方法を言うねん。
ていうか、そもそも商品勘定と売上原価勘定の違いわかってるやんな?
マネ:流動資産と損益の勘定科目の説明にあったやん。
商品はB/S勘定で、売上原価はP/L勘定やろ?
ひで:そう、その通り。
ほんで、この売上原価対立法で仕訳を切るとこうなる。
前提となる取引
- 商品を800円分を現金で仕入れました。
- 原価600円分の商品を1,000円で現金販売しました。
ひで:仕訳の意味わかる?解説してみ?
マネ:えーと、1つ目と2つ目はそのまんまやんな。
現金仕入が800円、現金売上が1,000円。
3つ目の仕訳が~、えーと、資産勘定の商品が貸方に行ってるから、商品が減ってて、
費用勘定の売上原価が借方に行ってるから費用の増加。
ということは、資産である商品が費用である売上原価に成り代わったってことやな。
ひで:ゴテイネイナゴセツメイドウモアリガトウゴザイマス。
そう、その通り、大正解。
つまり、売上っていう取引と、費用計上っていう取引を別々に考えてんのな。
ほんで、売上1,000円と売上原価600円やから、
最終的に残るのが、利益400円っていう計算な。
マネ:おっけー、これは大丈夫。簡単。
三分法
ひで:ほな次、三分法いくで。
三分法は、商品を仕入れた時は”仕入勘定”で受けて、
月末とか期末日に仕入勘定から在庫として残ってる分だけを商品勘定に戻す方法やねん。
マネ:ぬぬぬ?急に難しいぞ?
そもそも仕入勘定てなんや?商品勘定とは違うんか?
ひで:仕入勘定は、費用勘定やねん。
意味合い的には売上原価勘定と最終的には同じ扱いになるから、
個人的には呼び方を分ける必要ないと思うねんけど、
三分法では何か知らんけど別の呼び方がつけられてんねん。
まぁ、賛否あるかもしれんけど、仕入=売上原価と思っといてええと思うで。
実際、おれもそういう風に考えてるし。何の支障もあらへんわ。
ほんで、仕訳の説明に戻るけど、言葉で説明するとちょっと難しいかもしれんな。
さっきと同じ取引を三分法で仕訳切るとこうなる。
マネ:どれどれ?ん?なんか変やない?
仕入は売上原価なんやろ?
ほんなら売上1,000円、売上原価800円で利益200円やん。
売上原価対立法の時と利益変わってしもてるやん。
ひで:まだこれで終わりちゃうねん。
さっき言うたやろ?月末とか期末に仕入勘定から商品勘定に戻さなあかんって。
仕訳で表すとこうや。
マネ:またなんか、知らん勘定出てきたで。
繰越商品?商品勘定とどうちゃうん?
ひで:えっとな、一緒や。
マネ:は?
ひで:繰越商品っていうのは、”今残ってる商品”っていう意味やから、
要するに商品勘定やねん。
これもほんま意味無いと思うわ。
やから、繰越商品=商品でええで。
マネ:うん、ほなまぁ、それはええわ。
この3つ目の仕訳で、えーと、費用が減って、商品が増えてるから、
最終的には仕入勘定が600円になって、繰越商品が200円になってると。
やから、利益は売上1,000円-仕入600円で400円か。
あー、確かにおんなじ結果や。
ひで:そう、結果は同じになる。過程が違うだけ。
結局、売上原価対立法と三分法はどっちがいいの?
ひで:さて、この2つの方法、どっちがやりやすい?
マネ:うーん、直観的には売上原価対立法かなぁ。
ひで:うん、まぁそうやろな。わかりやすい。
わかりやすい上に、経営管理面でも、
売上がいくら、売上原価がいくら、在庫がいくらっていうのが、
リアルタイムに把握できるから優れた方法やと思う。
やけど、実務的には、売上原価対立法を採用できる事業者はそんなに多くない。
マネ:えーなんでなん?
ひで:売上原価対立法の問題点はな、
売上の度に売上原価を持ち出してこなあかんことやねん。
マネ:えーと、どういうことや?
ひで:つまりな、商売っていろいろあるけど、
スーパーみたいな小売業とか、商社みたいな卸売業とか、製造業とか、
どれもすごい数の在庫が日々動くやろ?
そやのに、売上がある度に商品一個一個の原価なんか調べてられるか?
マネ:え、無理。
ひで:せやろ?やから多くの事業者にとっては、
この売上原価対立法を実務で使うのは不可能やねん。
あるいは、仕入の部署と販売の部署が分かれてるような場合には、
販売の部署の人は売上金額はわかるけど、
仕入金額つまり原価はわからんかったりするねんな。
せやから、そういう意味でも実務上不可能やったりすんねん。
ただ、例えば、扱う商品数の少ない古物商とか、
商品1点1点の規模が大きい車の販売店とか、
そういう商品ごとの原価の把握が可能でなおかつ、
1点ごとの原価管理が必要な事業者はこの方法採用したらええんやで。
マネ:ほな、結局はほとんどの事業者にとっては、
三分法しか方法がないっていうことなん?
ひで:まぁ、そう思っといてええと思う。
なんせ楽やねん。
仕入れたら、仕入れた分だけ仕入勘定に突っ込んどいて、
売上は何も考えんと売れた金額だけ売上計上する、と。
ほんで、期末になったら、残ってる在庫を数えて、
仕入勘定から商品勘定に戻すだけ。
あら簡単。
マネ:確かにそう言われると三分法が優れてる気がしてきた。
三分法の欠点
ひで:ただし、三分法にも欠点はあんねんで。もちろん。
というのは、期中はずっと”仕入れっぱなし”やろ?
期の途中途中では、帳簿上仕入れたものが全部仕入勘定、
つまり損益勘定に計上されてしもてて、
リアルタイムでは利益の額がわからへんねん。
さっきの例で言うと、
1,000円-800円で利益200円ってなってたのはおかしかったやろ?
在庫が200円あるっていうことが把握できて初めて、
「あ、本当の売上原価は800円-200円=600円やったんやな、」
っていうのがわかんねん。
マネ:期中に利益の額を把握しようと思ったらどうしたらええの?
ひで:棚卸をしてその時点での在庫の金額を確定せなあかんのよ。
やけど、棚卸なんか、おいそれとできるようなもんちゃうからな?
マネ:あー、そうやなぁ。ほんならほとんどの事業者にとっては、
期中の利益額がわからへんっていうデメリットを受け容れた上で、
しゃあなしに三分法を使ってんのかー。
ひで:そういうこっちゃ。
まとめ
ひで:というわけで今日のまとめ。
- ほとんどの会社は三分法を使う。
- 三分法では売上は売上た分だけ、仕入は仕入れたぶんだけ計上する。
- 月末や期末に棚卸を実施して、在庫金額を把握し、
仕入勘定から商品勘定に戻す処理をする。
ひで:以上。これで売上と仕入はもう完璧。
(次回へ続く)
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