【第16話】費用の前払い処理-払った分だけ経費になるわけじゃありません-

猫と学ぶ簿記超入門物語
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こんにちは原田です。

猫と学ぶ簿記超入門 第16話をお届けします。

今回は前払費用についてです。

経費の支払いは経理実務では超頻繁に出てくる処理ですが、

実は全部が全部、単純に費用処理していいものばかりではありません。

登場猫物と登場人物

原田会計の招きネコ、マネ

原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)

前回のお話

【第15話】棚卸資産の払い出し単価の算出方法
今日は棚卸資産の評価についてご説明します。 棚卸資産の計算がきちんとできていないと、 売上総利益が適切に算定できません。 売上総利益が適切に算定できないと、 経営計画や予算が狂ってきます。

ひで:よろしくやっとるかねーマネくん。

マネ:あ?よろしくてなんやねん?

帳簿やったらちゃんとやっとるぞ。

ひで:よきよき。

まぁ、そうは言うても責任者やし、

たまにはチェックはさせてもらうかね。

・・・

・・・

ひで:せやんな。これ教えてへんかったもんな。

マネ:なんか言うた?

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費用にするのはサービスを受けた分だけ

ひで:この雑誌の年間購読費な、

これちゃんと教えとかんとあかんなと思て。

マネ:何のことかようわからん?

雑誌48,000円の請求書来てたで?やから、

新聞図書費 48,000円 普通預金 48,000円

これでええんちゃうん?

ひで:うん、ぱっと見これでええねんけど、

こっからもうひと処理せなかあんねん。わかってへんやろ?

マネ:わかってへん。ていうか、これで終わりちゃうんか?

ひで:ちゃうねん。

まぁ、知ってるか知ってへんかだけの話やから、説明するわ。

ひで:今回の請求書の内容をもっぺん教えて?

マネ:えーと、月刊誌の年間購読日48,000円。

期間は2019年4月から12ヶ月で、支払期日は2019年4月10日。

ひで:OK、了解。

まず支払った時の仕訳なんやけど、

↑の仕訳自体は別になんの問題もないねん。

48,000円払ったから、費用48,000円。

ここで考えなあかんのは、購読期間よ。

マネ:期間?4月から12ヶ月やから来年の3月までやな。

ひで:おれは個人事業主やから、会計期間は1月から12月な。

そしたら、4月に払った48,000円のうち、

当期の間に受けることのできるサービスはいくらぶん?

マネ:えっと、それはつまり、12ヶ月分のうち、

4,5,6,7,8,9,10,11,12月分やから、9月分!

ひで:そう、ほんなら残りの3ヶ月はまだサービス受けてへんねんから、

費用にしたらあかんやん?

マネ:え?あかんの?ちゃんと払ったやん?

ひで:あかん。費用にしていいのははちゃんとサービスを受けた分だけ。

マネ:ほーん。そういうもんなんか。

サービスを受けてない分は前払費用へ

マネ:そしたら、残りの3ヶ月分、えーと12,000円か、はどうしたらええん?

ひで:前払費用勘定にもっていく。資産や。

マネ:えーと、こうか?

前払費用 12,000円 新聞図書費 12,000円

ひで:せやな。

まぁ、一般的にはこの処理は期末にする。

ほんで、期が明けたら、この仕訳をひっくり返す。

新聞図書費 12,000円 前払費用 12,000円

これを再振替仕訳という。

マネ:えーと、確認してええか?

期末にまず3ヶ月分を費用から抜いて、資産にもっていく。

ほんで次の期になったら、資産から3ヶ月分を費用にもっていく。

OK?

ひで:OK。そういうことや。

ひで:ほんでな、ここまでが教科書的な話やねん。

ただ、実務的には、っていうか、

経理管理をちゃんとしようと思ったらこれではあかんと思うねんな。個人的には。

マネ:教科書を否定するのかーーーー

ひで:否定はせんよ。1年間のB/S,P/Lだけ見たら教科書の方法も、

今から説明する方法も一緒や。

マネ:ほな何が違うか、というと?

ひで:月次損益やな。

経営管理のためには、月次損益に美を求めよ

教科書のやりかたやと、月次の損益どうなるかわかるか?

マネ:どうにもなりません!

ひで:なるから言うとんねん。

あのな、こうなんねん。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 4-12月
48,000 0 0 0 0 0 0 0 -12,000 36,000

マネ:うん、確かに、そうなる。

ひで:これ、イケてなくない?

マネ:確かに。でこぼこ。ましてや、12月はマイナス。

ひで:そうやねん。こんなん月次の利益計算おかしなるやん。

やから、

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 4-12月
4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000 36,000

こうしたくない?

マネ:美しい。

ひで:せやろ?正しきものは美しいのだよ。

というわけで、この美を実現するための仕訳は以下の通り。

支払い時

前払費用 48,000円 普通預金 48,000円

4月度

新聞図書費 4,000円 前払費用 4,000円

5月度

新聞図書費 4,000円 前払費用 4,000円



12月度

新聞図書費 4,000円 前払費用 4,000円

ひで:要するに支払った時は全額前払費用として計上しておいて、

4月から12月の9ヶ月の費用仕訳を”予約で”入れといたらええんよ。

絶対忘れるから。

マネ:なーるほどな。確かに結果は一緒になるわ。

勉強なった。

ひで:今回は雑誌の年間購読費やったけど、

他にも保険料とか、家賃とか、〇〇使用料とか、

まとめて何ヶ月分とか払うやつはこのパターンの可能性があるから気いつけや。

マネ:OK!

ひで:ほんなら、せーの、

ひで&マネ:正しきものは美しい。

(次回へ続く)

【第17話】費用や収益の繰り延べ・見越し
昨日は前払費用について説明したのですが、 実は、前払費用と同じような習性を持つ勘定科目が他に3つあります。 前払費用を例に具体的な考え方を学んだところで、 経過勘定項目という全体観を押さえておきましょう。
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