不良債権を処理しないメリット・デメリット -損失処理はタイミングを見て-

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事業を経営していると、多かれ少なかれ回収できない債権というのが出てくると思います。これを放置しておくか、処理してしまうか。メリットとデメリットをそれぞれご紹介します。

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経営に不良債権はつきもの

事業を経営するにあたって、未回収の債権に出くわすことはほぼ不可避です。

なぜなら、どんな業種でも、どんな業態でもモノ・サービスの売り買いが100%現金ということはほとんどあり得ないからです。

一番一般的な未回収債権のレシピは、金回りが悪くて信用レベルの低いお客さんに長期の掛けでモノを売ることですね。

いくら売り上げが欲しくてもやってはいけないやつです。

経営者にとって本当に欲しいのは売上”高”ではなくて、売上”金”ですよ。

医療業界なんかで言えば、窓口未収がそうですね。診察を受けた後で、「現金有りません、後から持ってきます」で持ってこないやつ。

あるいは、救急搬送されて、手持ちがないやつ。

病院側からすると、診察拒否できないので悪質です。

他にも、例え飲食店などの現金商売であっても、売掛金以外のところから未回収債権は発生します。

貸付金や、仕入先からのリベート、同じく仕入先への前渡金、固定資産の売却代金などなど、あらゆる債権が不良債権化し得ます。

To do or not to do? やっちゃう?やめとく?

これらの未回収債権に対して、経営者が取り得る方針は2つしかありません。

  1. 損失処理する
  2. 放置する

損失処理とは、会計上は回収を諦めたことにし、問題となっている債権を資産勘定からなくしてしまい、損益計算書上に”貸倒損失”として計上することをいいます。
なお、回収不能となる額を見積もって、費用計上する貸倒引当金処理もこれに含めるものとします。

放置するとはその名の通り、会計上何も手をつけないことです。

※厳密には上記以外にも、弁護士や債権回収会社(サービサー)に債権回収を委託するとか、不良債権を流動化する(安値で買い取ってもらう)っていう方法もあるといえばあるのですが、本論の趣旨とは異なりますので、説明は省略します。

正直に損失処理がオススメ。ただしタイミングは計りましょう。

では、いざ債権の未回収に出くわしたとき、どちらの策をとればよいのでしょうか。

まず、一応説明しておきますが、会計基準が厳密に適用される上場会社等の場合、未回収債権に対しては、その処遇について選択肢はありません。

どういうことかというと、入金の見込みがあるならば、放置(というか、引き続き回収努力をする)ですし、入金の見込みがないならば全額損失処理です。一部入金見込みがあるならば、入金見込み分だけを残して貸倒引当金を計上します。

これが本来の会計基準に則った処理です。

ただし、決算を開示する義務の無い中小企業の場合は、1と2のどちらを選ぶかという、ある程度の自由が利きます。

では1と2それぞれのメリットデメリットをご紹介します。

損失処理

  • メリット
    不良債権が一掃され、貸借対照表が綺麗になり、金融機関等に胸を張って貸借対照表を見せることができる。→資金調達を行う上で経理処理のクリーンさをアピール。
  • デメリット
    回収見込額を見積もるのに手間がかかる。
    一時的に損益計算書が痛む。当然、損失が追加で生じますので、黒字見込みだったものが赤字に転落することもあり得ます。

放置

  • メリット
    強いて言えば、利益水準がそれほど高くない時に、赤字転落することを防げる。
  • デメリット
    とにかく貸借対照表が汚くなり、金融機関等からの信用を失う。また、同様にまともな経営分析ができなくなる。

当然と言えば当然ですが、損失処理と放置のメリット・デメリットはコインの裏表です。

これらを見てどちらにすべきと思われたでしょうか。

既に説明した通り、基本的には損失処理です。

会計基準に従った原則的な経理処理であるということはもちろんなのですが、貸借対照表が綺麗になって経営分析資料としての価値が上がり、金融機関等外部からの信用も得られるという意味においては、損失処理できるならしてしまった方が◎です。

ですが、残念ながらいつも利益カツカツで回しておられる経営者さんにとっては、やむを得ず放置しているというケースも多くあります。

いつもギリギリ黒字なのに、不良債権を処理しちゃったら、赤字になっちゃうよという状況ですね。

ただ、金融機関は(よっぽどヘッポコな担当者でない限り)、決算書をちゃんと見ます。

例えば減価償却費がちゃんと規則的に計上されているかどうかといったことや、毎期毎期同じ債権が貸借対照表に残っていないか(=不良債権化していないか)ということをです。

ですので、いくら損益計算書上で利益が出ていたとしても、実質赤字であることが”ばれてしまいます”。

もちろん、循環取引等を利用した不良債権隠し等の会計不正は論外ですが、対金融機関で言えば、見かけ上の黒字計上はあまり意味がありません。

むしろ、赤字となってしまったとしても、「あ、この会社は経理ちゃんとしてるんやな」という信用を得ておいた方が良いと思いますよ。

補足
損失処理のタイミングとして良いのは、いつもは黒字だけど、今年は赤字になってしまった!という時に、その赤字に便乗して損失処理してしまう方法です。
どちみち赤字ですから、そういうチャンスを利用して不良債権を一掃してしまいましょう。
本稿で言うところの”損失処理”によって生じた損益計算書上の損失が、税務上損金として扱われるかどうかについては、税法上厳密な基準がありますので、担当の税理士さんか、原田に相談してくださいね。
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