経営分析を実施するには、まずその前段階として、「経営分析に使えるように」帳簿が整えられている必要があります。
経営分析の大前提
みなさん、はどのような経営分析を実施していますか?
経営分析の手法自体にはたくさんの種類があります。大きく分けて収益性の分析、効率性の分析、安全性の分析、生産性の分析、成長性の分析、損益分岐点の分析といったものがあります。
かつこれらの分析はさらに細分化され、単純な増減分析から、比率分析、回帰分析といった複雑で専門的なものまで様々です。
しかし、どのような分析を行うにしても、必ず共通している前提があります。それは、帳簿が会計のルールに則って作成されているということを大前提とし、さらに経営分析が可能なようにできていなければならないということです。
(ちなみに逆に言うと、帳簿が誤って作られていると、経営分析を実施すると、その誤りが発見できることがあります。そういう意味で、誤りを発見する目的で経営分析を実施するということもありえます。ちなみに公認会計士が行う会計監査は、監査手法の一つとしてこの考え方を用いています。)
ありがちな分析
一番単純な試算表の月次推移分析を実施することを考えてみましょう。まず12ヶ月分の試算表を横に並べてみます。そして例えば、販売費及び一般管理費(以下SGA(Selling, General and Administrative costの略))の合計額の推移を見てみましょう。
「うんうん、毎月だいたい1,000万円ぐらいだな。月ごとの売上もそんなに変動ないし、売上に占めるSGAの比率も予算通り。おかしなところはなさそうだな。」
「ほんまやな?ほんまに異常ないんやな?4月に家賃1年分前払いしとったけどほんまに大丈夫なんやな?減価償却計算は期末にしか回してへんけどほんまにええんやな?こないだちょっと業績がよかったから言うて、思い付きで特別賞与だしてたけどそのほんまに影響ないんやな?」
まぁ、こんな感じです。(どんな感じや)
損益を平準化するという考え方
今日みなさんにお伝えしたいのは、「損益の平準化」という考え方です。専門的な言葉でいうところの「費用収益対応の原則」にもつながってきますが、堅すぎて気持ち悪いのでパスします。
要するに、会計ルール的には何ら間違ってないけども、分析できるようにはつくられてまへんでにーちゃん。ということです。
四半期決算を行う必要のない中小企業の場合、損益、特に費用が特定の月に偏りすぎていることがよくあります。費用をまとめて払ったら、年度またぎぐらいは気にするけど、月またぎはノールックというケース。減価償却計算は年1回というケース。賞与は決算の結果をみてから鉛筆なめなめして支給、なケース。
いずれも中小企業の会計ルール的にはさして問題のないものです。しかし経営分析を実施するとなると話は別です。このような問題のある試算表をもとに経営分析を実施しても、経営上の問題を適切に発見することはできません。
上記の例でいうと、4月に家賃を1年分前払いして、按分処理をしていないのならば4月のSGAが、減価償却計算を期末1回しかやっていないのならば3月のSGAが、賞与を思い付きで支給しているのならば、支給月のSGAがそれぞれ他の月より膨らんでいるはずです。(すべて3月決算を想定)
それなのに、すべての月がだいたい同じようなSGAの額になっているということは何かがおかしいはずです。もちろん一つ一つ上記のような偏った処理を分析結果から除外していけば、そのうち、正しい分析結果にたどり着くはずではありますが、たぶん間違えますよ。自身あります。
というわけで、うちの会社をもっとよくするんだ!経営分析するんだ!と思うのならば、まず帳簿を”それ用”に作るところから始めなければなりません。
一番わかりやすい考え方は「均等にばらまく」です。先述の家賃にしろ減価償却費にしろ、賞与にしろ、”まとめて計上した月に効果もまとめてドンと出た”わけじゃないでしょう。
オフィスも機械も年間を通じて使っているはずですし、賞与も本来の考え方でいうと、1年間や半年間の経営努力の積み重ねの結果払えるようになったものでしょう。
ですので、上の例でいうと家賃は払った月は前払費用にしておいて、12ヶ月に均等にばらまく必要があるのです。減価償却計算は毎月回す必要があるのです。賞与はできるだけ毎月支給見込み額の12分の1や6分の1を見積り計上しておく必要があるのです(引当計上)。
面倒ですか?しかし、綺麗にやっておくと、ある種の達成感みたいなものがあふれ出てグフフとなりますので、是非やってみてください。(引当金については難しいのでまた今度解説します)
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