韓国が徴用工問題に関連して、三菱重工等に損害賠償命令を出していることにたいして、日本がようやく重い腰を上げて、対抗措置を取り始めましたね。
今回はこの対抗措置による影響を、企業経営に当てはめてみて、どのように取り扱うべきかを考えたいと思います。
徴用工訴訟の概略と、日本による半導体材料を利用した対抗措置の説明
韓国における徴用工訴訟とは、第二次世界大戦中、日本の占領統治下にあった朝鮮半島において、日本の企業の元で働いていた労働者とその遺族が、当時の労働待遇が苛烈であったとして、日本の複数の企業に対して損害賠償請求を行っているもので、2018年10月に韓国大法院(最高裁判所)による日本企業が個人賠償すべしとの判決が出て以降、韓国の裁判所による日本企業の現地資産差し押さえが迫る中、日本側の対応が待たれていたものです。
(徴用工訴訟問題そのものについてを書きだすとキリがないので、これぐらいにしておきます。)
今回日本側が打ち出した対抗措置は、以下のようなものです。
- 半導体製造材料3品目の輸出を規制
- 輸出許可申請の免除対象国からも除外
- 4日から個別に輸出許可審査
平たく言うと、半導体生産に必要不可欠な基幹素材を、これまでほぼ無制限で輸出していたものを、これからは個別にちゃーんと審査してから輸出しますよ、というもので、事実上の輸出禁止にあたるものと言われています。
この、対抗措置を受け、韓国国内の半導体界隈ではまあまあのパニックに陥っているようです。
そりゃそうですよね。
いわく、当該素材は日本からの輸入依存度が9割を超えているので、今あるこれらの素材の在庫3ヶ月分がなくなると、生産が継続できないということのようです。
当ブログは慌てふためく韓国をみてメシウマするところではないので、本記事ではこれらの問題から見える企業経営上の留意点を考えてみたいと思います。
論点は次の2つです。
- 韓国が基幹素材の大半を日本からの輸入に依存していること
- 日本から見ても韓国はお得意様であるとともに、半導体最終製品の多くを韓国から輸入していること
1.仕入れの依存度について
韓国側は半導体生産にあたっての基幹素材、すなわち生産にあたって最も重要な材料の9割以上を日本からの輸入に頼っているとのことですが、これは敵に自分の工場の蛇口の栓を握られているということに他なりません。
これが、友好国ならば話はまた違ったかもしれません。
しかし、韓国は嘘か誠か、日本を仮想敵国として認定していますので、重要素材を敵からしか入手できない状態にあったということです。
この状態を企業経営で言うなれば、調達部門が仕入先の開拓を怠り、常にほぼ1社から自社の製造に欠かせない重要部品を仕入れていたことになります。しかもその1社はライバル企業。
これは明らかに調達部門の怠慢です。
調達部門の大きな役割は、調達の安定とコストダウンです。
仕入先を1社に依存していると、この両方を達成することができません。
なぜなら、調達の安定に関しては、その1社が倒産等するあるいは、その1社との関係がこじれると、今回の日本と韓国のように、部品を売ってもらえなくなる可能性がります。
コストダウンに関しては1社からの購買ということになると、相見積もりが利かなくなり、結果としてその1社の言い値で買うしかなくなります。
調達先の複線化は面倒で、手間も時間もかかります。
しかし、調達の複線化は企業経営の安定のためにも、またコストダウンによる利益率の改善のためにも必ず取り組むべき課題です。
仮に複線化が難しいということであれば、その調達先に依存しない製品の開発や、代替材料の開発・調達等で対応しなければなりません。
2.得意先の依存と、日本が韓国から半導体最終製品を購入しているということ
今回の対抗措置によって、日本も損害を被るかもしれないから、冷静に大人の対応をするべきだという論調があります。
というのも、確かに日本は韓国の工場の蛇口を握ってはいるのですが、一方で、韓国への当該素材の輸出がなくなると日本にとってもダメージであること、及び韓国で生産した半導体の最終製品を多くの日本企業が逆に輸入しているため、蛇口を占めるということは、日本国内の生産をも滞らせることにつながるからです。
現在の日本と韓国はある種チキンレース的な状況に陥っています。
半導体生産は韓国が世界シェアの約30%を保持しており、いかに基幹素材であっても、得意先が一本化してしまい、そこに売りつけることを辞めてしまうと日本自身ががダメージを受けてしまいます。
そのダメージとは、まず当該素材の売上が無くなってしまうというものと、韓国が製造した半導体製品を逆に日本が買えなくなるという影響です。
あとは、韓国のダメージと日本のダメージのどちらが大きいか。
どちらが先に値を上げるかという問題です。
(おそらく、日本がギブアップすることにならないように考えて制裁品目を選んでいるとは思いますが)
ですので、自分がした制裁が、回り回って自分の首を締めるという訳です。
この状況、企業経営に当てはめてみると、今度は得意先の複線化という話になります。
これも企業経営にあたっては基本と言えますが、なかなか難しい部分ですね。
買ってくれると言うので、こちらも忙しく手を動かしてがんばって作るわけですが、売り先がいざ必要ない、あるいは関係悪化で売りたくないとなったら、売上急減即大ピンチです。
今回の日本と韓国のように、日本側が主導権を握っている、すなわち”基幹素材であることを盾に取れる”状況であるならばまだしも、他社でも調達可能なものしか作っていないのに、得意先が限定されているという状況はマズいの一言です。
今がどれだけ忙しくとも、一刻も早く新規販路を開拓に乗り出すべきです。(中小企業であれば、販路開拓のための公的補助金などもあります)
というわけで、今日の結論です。
チキンレースに陥る前に、仕入先も得意先も複数の柱を用意しておきましょう。
(言うは易し行うは難し)
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