損保ジャパンが介護業界を利用して4000人をリストラをしようとしている件について

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損保ジャパンが4,000人のリストラを計画していることが明らかになりましたね。

今回のリストラ、調べるほどに日本における諸問題が浮かび上がってきます。

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損保ジャパンが計画しているリストラの内容(表)

「損害保険ジャパン日本興亜が2020年度末までに、

従業員数を17年度比で4000人程度減らす方針であることが24日分かった。

全体の約15%に相当する。ITを活用し、業務の効率化を進める。

余った従業員は介護などを手掛けるグループ企業に配置転換し新卒採用も抑える。

希望退職者の募集は予定していない。

20年度末の従業員数は2万2000~2万3000人程度に減り、

人件費などを年約100億円圧縮できる見通し。(以下略)」

(以上、時事ドットコムより転載。)

要約すると、

「1年半で27,000人のうち4,000人をグループ内の介護事業会社に転籍させ、

損保ジャパン本体は身軽&筋肉質になる。」

と言っています。

損保ジャパンが計画しているリストラの内容(裏)

このリストラ案、サラサラっと読んでしまうと、

“親会社である損保ジャパンの余剰人員を介護事業を担うグループ企業に配置転換し、

人余りと人不足を平滑化しようとするもの”

と読み流してしまうかもしれませんが、事はそう単純ではありません。

介護業界は確かに超絶人手不足状態が常態化しています。

ですので、人余りとなっている親会社からの大量異動が叶えば、WIN-WINです。

しかし、介護は泣く子も黙る3K&低賃金。

それまで保険業界で生きてきた人が介護業界に順応することが可能なのでしょうか。

今回のリストラ、どのような人たちが対象になるかは明示されていません。

しかしほぼ間違いなく、高給取りかつ能力が低いと判断された中高年社員でしょう。

そんな人たちが、介護業界に送り込まれたらどうなるか容易に想像がつきます。

  1. 異動される前に自主退職
  2. 介護業務に絶望して自主退職
  3. 介護業務に順応

果たして”3″に該当する人が何割いるでしょうか。

5割なのか3割なのか1割なのか、それは私にはわかりません。

しかし、いずれにしても4,000人の内の相当数が退職していくことになるでしょう。

これが何を意味するか。

損保ジャパン側が最も果たしたい目的は損保ジャパン本体のリストラです。

上でも述べた通り、(おそらく)生産性の低い中高年社員の首を切りたいのです。

しかし、今の日本の法律ではおいそれと首を切ることはできません。

通常であれば希望退職を募り、割増退職金を払って辞めてもらうことになります。

ところが今回の場合はどうでしょうか。

表向きは、グループ会社への転籍です。

転籍ですので、転籍先で働くも、納得できずに辞めるもその人の決断次第です。

ということは、転籍に納得できず、辞めることとなっとしたら?

そう、自主退職扱いになりますので、割増退職金が発生しません

上場企業の希望退職に伴う割増退職金は安く見積もっても一人平均1,000万円です。

ということは、仮に2,000人が退職となった場合、1,000万円×2,000人=200億円が浮く計算です。

辞めてもらってもOK、介護で働いてもらってもOK。

どちらに転んでも損保ジャパンにとっては都合の良い展開になる正にウルトラCです。

損保ジャパンのリストラ策は許されうるか

今回の損保ジャパンのリストラ案、血も涙もない悪行と思われるでしょうか。

それとも天晴れと膝をたたかれるでしょうか。

今回は、法の抜け道のような感じで数千人の首が切られる(と思う)ことになります。

しかし、企業側としては至極当然の選択だと思います。

損保ジャパンは今回のリストラを見越してか、3年半前に介護事業2社を買収しています。

損保ジャパンはその浮いたお金で新たな人材を雇い入れることができます。

もっと若く、もっと安く、もっとやる気のある人材です。

マクロな視点でいうと、人材流動性が高まり、適材適所が達成されます。

日本では未だに、大学卒業時の新卒一括での総合職採用が主流です。

雇用した時点では彼らにどのような能力があるかわかりません。

雇い入れてから適当な部署に配属して、とりあえず働かせてみます。

そして、その中から一握りの人材だけを出世させていきます。

出世した人はもちろん言うことなしです。

では出世できなかった人たち、つまり能力が低いとみなされた人たちはどうなるでしょうか。

年功序列で給料は上がっていくのに、年齢に見合った能力がない社員が大量に滞留します。

だのに、法律に縛られて、会社側はその人たちの首を切れない。

逆に、従業員側からすると、首を”切られてしまわない“ということになります。

この状態は双方にとって不幸をもたらします。

会社側の不幸は言わずもがなですが、従業員側からしても不幸に違いありません。

彼らは首を切られることがないとタカをくくってしまいます。

そうすると彼らは意図せずして、ある努力を怠ってしまいます。

もし「首を切られたら」という事態に備えて身に着けておくべきスキルを習得する努力をです。

具体的には、独立して生きていくスキル or 転職でアピールできるスキルです。

そんな彼らが今回のように、自主的に辞めさせられるように仕向けられたらどうなるでしょうか。

一歩会社を出ると、スキルもなく年だけ食った、本当に使えないおじさんと化してしまいます。

残念ながら、もはやこのご時世、何も考えずに会社にしがみついていれば一生安泰というわけにはいかなくなってきました。

この潮流には賛否両論あるでしょう。

しかし、すべての人が常に頭を動かして、スキルの習得に励み、

収まるべきところに収まっていくという考え方は、それはそれで合理的です。

そして、その結果生じる格差は”正常な格差”ではないでしょうか。

むしろ、大した能力のない中高年が、”長く在籍している”というだけで、

やる気も能力もある若者よりずっとたくさんのお給料をもえらる方が不公平です。

私が監査法人辞めた理由の一つもこれです。

組織にいたままでは甘えてしまって、自分ではスキルを磨かないだろうな、と判断しました。

組織にいては自分のお尻に火がつかなかったのです。

なので、組織側から”早く辞めてくんねーかなー”と思われる前に自ら身を立てる決心をしました。

ほかにも理由はもちろんありますけどね。

いつの時代も人事戦略は主要な経営課題の一つです。

ですので、早く総合職というものが無くなって、ジョブディスクリプションによる採用が広まり、

能力を持つ人が然るべき職に就き、然るべき給料をもらえる世の中になったらなぁと思います。

ジョブディスクリプション
職務記述書と言われるもので、従業員ごとの仕事の範囲、給料等の雇用条件や、
スキル要件が細かく記載されており、被雇用者はこれに従って労働を提供する。
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