こんにちは原田です。
猫と学ぶ経営管理の第6話をお届けします。
昨日に引き続き外注費と給与のお話です。
損益・税金の面だけを見ると、
スポット業務はすべて外注費にしたいところですが、
そうなると税務署が黙っていないのは想像がつきますよね?
(前回のお話)
登場猫物と登場人物
原田会計の招きネコ、マネ
原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)
全部外注費にしたら国が激おこです
マネ:で、なんで全部外注費にしたらあかんの?
ひで:外注費と給与とで、違いが出てくるのってなんやった?
マネ:えーと、
- 源泉徴収の有無
- 消費税の仕入税額控除の有無
- 社会保険料の事業者負担の有無
この3つ。
ひで:そう、所得税と消費税と社会保険料。
で、外注費で処理するっていうことは、
納めるべき所得税と消費税と社会保険料が少なくなるっていうこと。
昨日の例をおさらいしとくと、
外注費で処理 | 給与で処理 | |
売上 | 21,600,000 | 21,600,000 |
給与 | 5,400,000 | |
法定福利費 | 700,000 | |
外注費 | 5,400,000 | |
消費税 | 1,200,000 | 1,600,000 |
利益 | 15,000,000 | 13,900,000 |
こうなる。
まず法定福利費70万円。
もし本来支払った報酬が給与に相当するもので、
社会保険料の加入義務があった場合、
報酬を受け取った人からしてみたら、
「は?なんで社会保険料払われてへんの?年金もらえへんやん!」
みたいな話になる。
次に消費税。
これは言わずもがなやろ。
本来納めるべき消費税の額より少なく納められることになるんやから、
もし税務署に見つかったらコラー!って言われる。
マネ:源泉徴収はどこいったん?この損益の表に見当たらへんけど?
ひで:そらそうや。源泉徴収で差し引く税金っていうのは、
事業者側の税金じゃなくて、報酬を受け取った方の税金やからな。
外注費の場合
外注費 | 5,400,000円 | 普通預金 | 5,400,000円 |
給与の場合
給与
|
5,400,000円
|
普通預金 |
4,200,000円 |
この仕訳みたらわかるように、
事業者側の費用の額は外注費であろうが給与であろうが変わらへんやろ?
単に、受取側が受け取る金額が変わるだけ。
せやけど、源泉徴収っていうのは、
“事業者が給与から差し引いて代わりに収める”っていう仕組みやから、
上の例で言うと、本来事業者が納めるべき源泉税50万円が納められてへんのが、
税務署に見つかってしもたら、事業者が怒られる。
マネ:本来は受取人が払わなあかん税金やのに、
事業者が払いなさいって言われるん?
ひで:そう。肩代わり。
肩代わりしてから、後で「ごめん、源泉税差っ引くの忘れてたから返して!」
って受取人に言わなあかん。超面倒臭いやろ。
マネ:ということは、今までの話をまとめると、
給与に該当する時はちゃんと給与で処理せなあかんっていうことやろ?
ひで:そう、その通り。
外注費か給与かの基本的判断は契約形態で決まる
マネ:ほんなら、どういうときが外注費でOKで、
どういう時が給与で処理せなあかんかの基準がないとあかんやん?
ひで:そらもちろんある。
もちろんあるんやが・・・、まぁええやろとりあえず説明するわ。
基本的に外注費か給与かっていうのは、
契約の形態によって決まってくるんやわ。
- 請負契約→外注費
- 雇用契約→給与
基本的にはこれでいいんやけど。
マネ:やけど、名前じゃなくて中身で判断しろっていうんやろ?
ひで:そういうこと。契約書のタイトルが”請負契約”になってるからって言うて、
中身が雇用契約っぽかったら、それは給与で処理しなさいよってこと。
まぁ、当然やわな。
外注費か給与かの実質判断方法とは
マネ:じゃあその中身はどう判断するかというと?
ひで:国税庁が通達で判断基準を出してるから載せとくな。
マネ:2と4はまぁわかるけど、読みにくいなぁ。
ひで:一つ一つ説明していくで。
あ、その前に言葉の整理だけしとくな。
報酬を支払う人→依頼人
報酬を受け取る人→受取人
その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか
ひで:これは、受取人がもし病気とかで休んでしもて、
納期に間に合わへんみたいなことになった場合に、
その請負人が誰か別の人に仕事を頼んで、
代わりに仕事を完成してもらうみたいなことができるかどうかっていうこと。
できる場合は請負→外注、できひん場合は雇用→給与。
マネ:雇用契約でも代わりはできると思うんやけど?
ひで:焦点が違う。請負契約は”完成したブツ”に報酬が支払われるのに対して、
雇用契約は”雇用された人”に対して報酬が支払われるねん。
だから、請負契約の場合は、極論やけど誰が完成させたってええわけよ。
マネ:あー、なるほどな。
役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
ひで:これはまあええやろ。
受取人が請け負った仕事をするにあたって、
依頼人にあれやこれや指示されるかどうかっていうこと。
さっきも言うたように、請負契約はその”完成したブツ”に焦点があてられるから、
完成品をちゃんと納めてくれさえすればなんだっていいっていう考え方な。
だから、
指揮監督を受ける時→給与
指揮監督を受けないとき→外注
まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
マネ:これマジで意味わからん。
ひで:お役所の文書なんかこんなもんやて。
言うてることは実はそんなに難しくない。
かつ考え方も上の二つとほぼ一緒。
つまり、完成品が納める直前に火事で燃えたりした場合に、
受取人が”完成品を納めてないけど”報酬をもらえるかどうか。
貰える時→給与
貰えない時→外注
マネ:あー、ほんまや、いっしょや。
あくまで焦点は完成品にあたってるから、
火事とかそんな理由はどうでもよくて、
納めたら報酬発生するし、
納めへんかったら報酬無しってことやな。
ひで:そう、その通り。
役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
ひで:最後やけど、これはわかりやすいんちゃう?
マネ:完成品を作るためのおぜん立てがされてるかどうかっていうことやんな?
ひで:そう。外注の場合は、受取人は”独力で”完成品を作らなあかん。
それに対して、雇用の場合は雇用主が全部用意してくれるやろ。
つまり、
おぜん立て有→給与
おぜん立て無→外注
まとめ
ひで:じゃあまとめるで。
以上の4つの条件を表にするとこうなる。
外注費 | 給与 | |
他人が代わりにやっても | よい | だめ |
依頼人の指揮監督を | 受けない | 受ける |
もし完成品が火事で燃えたら | 報酬貰えない | 報酬貰える |
依頼人のおぜん立てが | 無い | 有る |
マネ:なるほど。
せやけど、4つも判断基準があったら、
2つは外注で、2つは給与とかになったりせえへんの?
ひで:それが難しいところやねん。
この4つの判断基準はどれも”絶対的な”ものじゃないのはわかるやろ?
つまり、結局のところは総合判断やねん。
マネ:なぬ。
ひで:せやけど、もし外注費にしてたところを、
税務署に指摘されていやいやこれは給与ですよなーんて言われた日には、
- 社会保険料の追加支払い
- 消費税の追加納付と追徴課税
- 源泉税の追加納付と追徴課税
- 受取人への社会保険料と源泉税の払い戻し請求
っていうクソ面倒臭い対応が待ってるから、
慎重に判断せなあかんにゃで。
マネ:とりあえず迷ったら所長に相談するわ。
ひで:それがよいと思われ。
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