賞与を月別に平準化するってどういうこと?-経営分析には必須です-

会計
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先日の記事で、損益を平準化しましょうということを解説しました。その中で、賞与についてもできるだけ月別に負担をばらまきましょうということを例に出しましたので、そのやりかた考え方をご説明します。

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おさらい

簡単におさらいです。

自社の売上や経費、利益がどうなっているのかを分析したいと思った時には、経営分析手法を当てはめる前提として、自社の帳簿(≒試算表)が経営分析に耐えうるように作られている必要があります。

そしてその「耐えうる」の意味の一つとして、損益を月別に平準化するということを挙げました。そうしておかないと月別に試算表を並べたときに、特定の月に売上や費用が偏ってしまい、適切な分析ができなくなるからです。

その中で、賞与も月別に計上してみましょうということを例に挙げました。「え?賞与って年に2回とかしか払わないでしょ?しかも金額ってその時にならないとわからへんやん」と思う方もいるかもしれませんね。

引当金とはなんぞや

しかし、会計の世界では、賞与は「予測可能なもの」としてとらえられています。この考え方を理解するには引当金とはなんぞやということを知っていただく必要があります。

まず会計基準上の引当金の定義を以下に載せます。

「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。 」(企業会計原則注解18)

一つ一つ解説していきます。

  1. 将来の特定の費用または損失
    →実際にはまだ発生していないけども将来払わないといけないものということです。
  2. その発生が当期以前の事象に起因
    →支払いはまだなんだけども、その支払いの原因・根拠はすでに発生しているということ
  3. 発生の可能性が高い
    →そのまんまです。将来の支払いの可能性が高いということです。
  4. 金額を合理的に見積もることができる
    →将来の支払金額がだいたいわかるということです。

以上1~4の条件をすべて満たす場合は、今のうちに費用を計上しておきなさいよ!(支払いはもちろん将来)というルールです。

賞与引当金の考え方

それではこの定義を賞与に当てはめて考えてみましょう。
当てはめの前提は以下の通りです。

  • 決算月は3月です。
  • 今は2019年の11月初旬(下期1ヶ月目の月次決算を終えようとしているところ)と仮定します。
  • 次の6月(2020年)に2019年10月~2020年3月の業績をベースに賞与を支給することを取締役会で決議しました。
  • 支給予定額は給与2ヶ月分±営業損益の5%です。
  1. 将来の特定の費用または損失
    →現時点である2019年11月初旬から見ると、次の6月(2020年)に払う賞与は当然「将来の費用」です。
  2. その発生が当期以前の事象に起因
    → 2020年6月支払賞与の計算期間は2019年10月~2020年3月の6ヶ月間です。その6か月の内、1ヶ月目は既に終わって業績が判明しています。つまり、支払い時期は到来していないものの、計算期間の一部は既に経過しているので、6ヶ月分のうち10月分は既に賞与支払の原因が生じていると言えます。
  3. 発生の可能性が高い
    →賞与支給予定額の中には業績連動部分が含まれるものの、取締役会の決議もあり、支払自体はほぼ確実に発生しそうです。
  4. 金額を合理的に見積もることができる
    →10月の営業損益は既に判明しています。従って10月分の賞与の額は計算可能です。

というわけで、この場合の6月の支給予定賞与は引当金の定義にあてはまっていますので、10月の時点で費用を計上しておきましょうということになります。これが引当金の計上と言われるもので、以下のような仕訳が切られます。

賞与引当金繰入額 XX円 / 賞与引当金 XX円 (10月分)

これが6回繰り返されることになり、期末の決算時に、損益計算書の賞与引当金繰入額に”だいたい2ヶ月±α”の費用が計上され、貸借対照表の負債の項目に”だいたい2ヶ月±α”の賞与引当金が計上されます。この場合の引当金は性質的には”未払金”に近い物で、費用は計上されているけども、支払いはまだですよという状態です。

この作業をすることにより、”業績に応じた、だいたいの賞与を月次で計上する”ことができます。

(今原田はあくまで月次損益の平準化ということに焦点をあてて説明しています。賞与引当金の計上自体は減価償却の考え方と同じように期末にまとめてドーンでも”ルール上は”問題ありません。)

なんとなくわかっていただけましたでしょうか。平たく言うと、月次で概算額を費用計上しておきましょうということです。

その他の引当金

上記では賞与引当金を例にとって引当金とはなんぞやということをご説明しましたが、賞与以外にも代表的な引当金として以下を簡単にご説明します。いずれも計上要件は↑と同じですので、自社の決算に当てはまりそうなら一度考えてみてくださいね。

  • 退職給付引当金
    →従業員の退職金のうち、すでに発生していると見込まれる部分を先に計上しておくもの。中小企業の場合、期末時点で従業員全員が一斉に辞めたと仮定した時の退職金額合計を引当金として計上します。
  • 製品保証引当金
    →売った製品に瑕疵があった場合のアフターサービス(修理や交換)に要する費用をあらかじめ見積もっておくもの。アフターサービスの発生確率や平均金額から引当額を見積もります。
  • 返品調整引当金
    →得意先での売れ残りが無条件で返品できるといった契約になっている場合に計上する引当金です。出版社が本屋さんに本を売る時とかです。返品率を見積もって、引当計上します。(返品調整引当金の費用科目は販管費ではなく、売上のマイナスです)
  • 事業整理損失引当金
    →いわゆるリストラ引当金です。人員整理や子会社の清算、事業の撤退等のリストラを決めたときに、実際にはまだリストラは始まっていないけども、リストラにかかる費用を見積もって引当計上します。上場会社でも時々話題になる引当金で、会社によっては何千億円レベルで計上され、会社を一気に赤字に陥れたりします。(呼び方は色々で、事業構造改善引当金や事業撤退損失引当金などとも言ったりします。)
  • 貸倒引当金
    →売掛金の貸し倒れに備えて計上する引当金です。回収できないであろう売掛金の額を見積もって計上します。なお、この貸倒引当金だけ他の引当金と少し毛色が異なり、他の引当金が”未払金の要素”を含んでいるのに対し、貸倒引当金は”評価損”の要素を含んでいます。(あまり気にしなくても大丈夫です)
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