損益取引と資金取引は別物です-現金主義と発生主義から出たややこしい違い-

ビジネス
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昨日、損益計算をする時に、借入金の返済は考慮しないということを書きましたが、それは借入金の残高がわからなくなっちゃうからです。

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お金の出入りは収支計算

まず本題に入る前に、一般的なサラリーマン家庭の家計のことを考えてみましょう。

多くの家庭の場合、家計の動き=お金の動きとなっていると思います。

1ヶ月の給料が売上で、現金(もちろん預金を含みます。以下同様)で受け取ります。

その受け取った現金を、食費、光熱費、家賃もしくは住宅ローン支払い、教育費、娯楽費、小遣い、クレジットカードの支払い、貯蓄といった費目に振り分けるイメージです。

つまり、現に手元にある給料例えば30万円を、貯蓄も含めて、どのように使い切るかという考え方ですね。

この考え方は損益計算ではなく、”収支計算”と呼ばれます。

収支計算では、収入と支出のすべてが”現金主義”で勘定されます。

ですので、

6月25日 給料 +30万円
6月31日 住宅ローン ▲8万円
7月15日 旅行 ▲5万円
・・・ ・・・ ・・・

といった風に、とにかくお金の出入りを並べていけば、最終的に1年間でお金がどれだけ余ったか、もしくはどれだけはみだしたか、がわかるということになります。

収支計算においては、お金の出入りがすべてのすべてです。

従って、1年間のすべての現金収入からすべての現金支出を引いた残り(収支差額)が、言うなれば収支計算上の利益もしくは損失です。

(誤解があってはいけませんので、念押ししますが、収支計算上、”利益”や”損失”といった言葉は本来使いません)

借入金の返済は損益取引ではなくて資金取引

さて、家庭の収支計算で出てきた、住宅ローンの支払い8万円。

これは損益計算上の”費用”と言えるでしょうか?


と、その前に。

この現金主義による収支計算は、家計はもちろん、小さな団体、例えばPTAや町内会などをはじめ、学校法人や多くの自治体で用いられています。

しかし、企業会計においては、この現金主義による収支計算は認められておりません。

では、企業は何をしなければいけないかというと、”発生主義による損益計算”です。

発生主義
取引が発生した事実に基づいて費用と収益を認識するという考え方

例えば、売上は、売上が”成立した時”にカウントし、仕入は仕入が”成立した時”にカウントします。

この時、現金の受け渡しがあったか無かったかは関係なく、現金売上でもあっても、掛け売りであっても売上は売上としてカウントします(仕入も同様)。


で、話を戻しますが、借入金の入金や返済といった純粋なお金のやり取りは、この損益計算には含めません。

借入金の入出金は、損益を構成する取引(損益取引)ではなく、あくまでただの資金のやり取り(資金取引)として扱うのです。

損益計算の目的の一つは、貸借対照表を作ること

ではなぜ借入金の入出金は資金取引としてみるのでしょうか。

それは、この発生主義による損益計算の目的の一つが、”貸借対照表を作成すること”だからです。

話が小難しくなるので軽い説明にとどめますが、貸借対照表とは、とある時点での企業の資産と負債と純資産(資本金や利益剰余金)の状況をすべて書きだしたものです。

現金がいくら、売掛金がいくら、固定資産がいくら、借入金がいくら、資本金がいくらといった風に、すべての資産、負債、純資産の残高を洗い出すわけです。

ところが、借入金の入出金を収益や費用として損益計算に取り込んでしまうと、簿記の仕組上、借入残高がわからなくなってしまうんですね。

ここが簿記の難しいところ兼、面白いところの一つなのですが、収益や費用として損益計算に取り込んだものは、貸借対照表上、資産でも負債でもなくなってしまうのです。

じゃあ何になるかというと、すべての収益と費用の差額、つまり利益として”利益剰余金”という、純資産の一項目の中に入ってしまいます。

負債の中の”借入金”として残したいのに、利益剰余金に行ってもらっては困るんです。

直観的な例えとして、借入金の入出金を損益として扱うということは、それを売上や給料と同列に扱うことになるということを想像してみたらいいかもしれません。なんか変じゃないですか?

まとめ

というわけで、やっぱり小難しくなってしまうので、このへんで止めておきます。

覚えておかないといけないのは、企業会計上、損益取引と資金取引は明確に区別されているということ。借入金の入金・返済取引は資金取引です。

(しゃっきんとりひき、しゃっきんとりひき、しゃきんとりひき、しゃきんとりひき、しやきんとりひき、しやきんとりひき、しきんとりひき!  ヽ(‘ ∇’ )ノ バンザーイ!ヽ(‘ ∇’ )ノ バンザーイ!)

そして、これが理由で、黒字倒産という概念が生まれるのです。(次回へ続く)

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