傘シェアは定着するのか-アイカサの挑戦-

ビジネス
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近年、車や住まいなどいろいろなシェアリングサービスが登場してきていますが、傘シェアリングは採算的に成り立つのでしょうか。

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傘シェアリングはこれまでビジネスとしては不成立

ビニール傘、私は折り畳み傘派なので、全く使いませんが、世の皆さんのおよそ3割ぐらいはビニール傘を常用しているそうです。

しかし、すぐ壊れる、忘れる、持ち歩かないので何回も買ってしまうということで、とっても不経済。また、壊れたビニール傘のごみ処理問題も生じているそうです。

こんな現状を憂いて、東京のベンチャー企業が”アイカサ(iKasa)“という名称で、傘の貸し出しサービスを始めています。

函館市やダイドードリンコがこれまでにも無料で傘の貸出を実施したことがありますが、函館市の場合は傘がほとんどかえってこず、ダイドーの場合も70%程度だったそうです。

やっぱり、無料だと返さないんですね。悲しいことに。

デポジット(保証金)を取るという選択肢はなかったのでしょうかね。手間の問題か。

アイカサ(iKasa)の傘シェアリングサービス

で、アイカサの貸し出しサービスは、”有料”です。

サービスの概要は以下の通り。

東京各地のデパートや駅など、雨が降って人が立ち尽くすような場所に、20本程度の傘立てを置いて、必要とする人がそれを借り、返す時は各地にある、どの傘立てに返してもいい。
傘立てそのものに鍵はついておらず、その代わり、そのままでは傘が開かないようになっている。
LINEでQRコードを読みこませ、傘に仕込まれたダイヤルロックを合わせると傘を開くことができるという仕組み。

LINEでQRコードを読み込むと同時に、料金の支払いと、身元確認をしているのだと思います。

身元確認できていないと結局持ち去られてしまいますからね。デポジットの代わり。

というわけでこのサービス、ビニール傘がポイポイ費消されなくてエコ&急な雨に困らなくなる、ということで、社会貢献という意味ではすごくいいと思うんですが、はたして採算が合うのでしょうか。

ちょっと計算してみましょう。

アイカサ採算シミュレーション

現時点でわかっている状況・条件は以下の通り。

  • 貸出料金は1日70円、月極で420円
  • 設置箇所は、東京180箇所
  • 一箇所あたりの据え置き本数は20本ぐらい
  • 渋谷の多いところでは1日あたり10本の貸出がある
  • 従業員は、社長を含め、HP上で顔出しされているコアメンバーだけでも4名
  • その他「たくさんの従業員がいる」とのこと
  • 当面の目標は2020年中に3万本設置

とりあえず、現時点の売上を考えてみましょう。

  • 1箇所あたり1日7本
    渋谷の多いところで1日10本なので、平均して7本とします
  • 月あたり7日
    月極で420円ということは、6日分の値段設定です。これは運営側が、月に6日より少し多い7日ぐらい傘が必要な雨が降ると予想しているということと見なしました。
  • 1年間の貸出延べ本数
    1箇所あたり1日7本×180箇所×月あたり7日×12ヶ月=105,840本
  • 貸出単価70円
  • 1年間の売上
    105,840本×70円≒741万円

続いて費用面。

  • 傘そのものにかかる原価
    個人で使う分には傘の寿命は4年ぐらいかなと思いますが、投資を抑えるため、そんなに良い傘は使っていない&レンタル傘ということで結構ぞんざいな扱いを受けることを想定して、耐用年数は2年とします。
    月当たり降雨日数を↑で前提とした、月あたり7日とすると、年ベースで84日。
    つまり、84日×2年間=168回つかったら廃棄。
    傘の仕入れ値が業務用大量仕入ではありますが、ダイヤルロックがついていたり特殊仕様なので、1本あたり500円と仮定します。
    ということは1本1日あたり約3円の償却費用と計算できます(500円÷168回=2.98円)
    従って、年間傘原価は、105,840本×3円≒32万円
  • 設置費用の償却費
    傘立ての費用です。オフィス家具的な視点でいうと、1箇所5万円ぐらいでしょうか。あまりしょぼすぎても駄目ですしね。
    そうすると、実耐用年数を長く見積もって5年としても、1年あたりの償却費は、
    5万円÷5年×180箇所=180万円。
  • 家賃
    コアメンバー4名+「たくさんの従業員」を合わせて10名とすると、
    東京なら最低でも30万円ぐらいでしょうか。
    年間で30万円×12ヶ月=360万円
  • システム運営費用とか、広告とか諸費用
    どれだけ少なく見積もっても月30万円と仮定します
    年間で30万円×12ヶ月=360万円
  • ということで、1年あたり費用は
    32万円+180万円+360万円+360万円=932万円

うーん。人件費すら出ずに赤字。。。

すべての費用を半分にしても、人件費控除前の営業利益が275万円ですからねぇ。とてもじゃないが、「たくさんの従業員」は食べていけそうにないですね。

これが設置本数30,000本になるとどうでしょう。

  • 1箇所当たり据え置き本数が20本なので、設置は1,500箇所。
  • 売上は設置個所に比例しますので、741万円÷180箇所×1,500箇所=6,175万円
  • 傘原価も設置個所に比例しますので、32万円÷180箇所×1,500箇所=267万円
  • 設置費用の償却費が180万円÷180箇所×1,500箇所=1,500万円
  • 設置個所が8.3倍になって、従業員数がそのままということはないと思いますので、
    アルバイトを3倍にしたとして、4名+18名=22名。
    そうすると、家賃は約倍の月60万円で、年720万円。
  • 諸費用もざっくり倍として720万円
  • 人件費控除前営業利益=6,175万円-267万円-1,500万円-720万円-720万円=2,968万円
  • 正社員4名が400万もっていったとして、アルバイト18人がそれぞれ76万円。

うーん、設置個所をどんどん増やして、アルバイトでまかなっていけばなんとかっていう感じでしょうか・・・

 

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