会社が企業年金制度(*1)を採用している場合、その会社を退職すると、積み立てられていた残高の行き先を決めなければなりません。これが結構難解なんです。
(*2)企業年金基金制度=確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(企業型DC)あるいは厚生年金基金
私は2019年3月に前職の監査法人を辞めましたので、退職一時金を受け取っています。
それとは別に、「公認会計士企業年金基金」という、いわゆる3階建て年金の3階部分がありまして、そこに会社はコツコツと積み立てをしてくれていました。
で、退職するとそのコツコツ積み立てられていた残高をどうするのか選べ!という通知が来ます。
どうするかの選択肢は以下の通りです。
- 退職時の積立残高を一時金として受け取る。
- 積立残高を企業年金基金に置いたまま、60歳まで支給を繰り下げる。
- 残高を企業年金連合会へ移管する。
- 個人型確定拠出年金(通称iDeco、以下iDeco)に移管する。
- (上記の以外に、企業に再就職した場合の選択肢として、再就職先の年金システムに移管するというのがありますが、原田は個人事業主として生きていきますのでこれについての説明は省略します。)
選択肢毎のメリットデメリット
さて、この4択問題ですが、どうするのが正解でしょうか。
選択肢毎にメリットデメリットを見てみましょう。
退職時の積立残高を一時金として受け取る
メリット
- 手元資金を増やすことができる。
→現時点もしくは近い将来に大きな資金需要がある場合に利用。
→もしくは、増やした資金を元手に、個人で運用できる(運用利回りは腕次第)。 - 退職所得控除が使える可能性がある。
→受け取った退職一時金と勤続年数の関係により、退職所得控除の枠が余っている場合には非課税で受け取ることができる。
デメリット
- 運用失敗の可能性
- ついつい使ってしまう
企業年金基金に残高を据え置いて、60歳まで支給を繰り下げ
元の企業年金基金で据え置いた場合、60歳になった時にそれを一時金として受け取るか、年金として受け取るかを改めて選択することになります。
年金が終身か有期かは基金次第です。ちなみに公認会計士企業年金基金は有期年金(5年、10年、15年の中から選べる)です。
メリット
- 公認会計士企業年金基金の場合、繰り下げ期間中は2%の利率が保証される
- 急なお金が欲しくなったら、いつでも一時金で受け取れる
デメリット
- 公認会計士企業年金基金の場合、運用利率は4.5%が上限として設定されており、将来のインフレ率に負けるおそれがある
- 年金として受け取る場合、他にも受け取る年金が多額にあると、公的年金控除の枠に収まらず、税金を払わなければならない可能性がある。
企業年金連合会へ移管
企業年金連合会とは、厚生年金基金や確定給付企業年金基金の中途脱退者の基金残高を引き継いで運用する機関です(公認会計士企業年金基金は確定給付企業年金基金です)。
企業年金連合会に移管すると、65歳から”通算企業年金”という形で年金が支給されます。
メリット
- 通算企業年金は”終身年金”。つまり、死ぬまで年金を受け取れる。
- 運用期間中は、0.5%~1.5%の利率が保証される(加入時年齢と加入時点で利率は変わります。原田は45歳未満なので1.5%が保証されます。)
デメリット
- 年金として受け取る場合、他にも受け取る年金が多額にあると、公的年金控除の枠に収まらず、税金を払わなければならない可能性がある。
iDecoに移管
iDecoとは、主に「厚生年金がなくて国民年金だけでは不安だよう」という人(原田のような個人事業主)が老後の蓄えを形成するのに適した年金制度。↓で説明するように、税制面のメリットが大きい。
メリット
- 個人事業主の場合税務上のメリットが大きい。
掛金(年最大810,600円)は全額が所得控除。運用益も非課税。さらに60歳以降一時金として受け取る場合には、掛金支払期間をベースに退職所得控除が使える。 - 運用の成果は腕次第
デメリット
- 60歳まで積立残高を引き出すことはできず、資金が拘束される。
- 運用に失敗するリスクがある
原田はこうする
原田は監査法人を退職し、現在は個人事業主です。
そして、今後も誰かに雇われるつもりはありません。なぜなら、人に雇われることが嫌になったのが、退職の理由の一つだからです。
もちろん、独立したからには、死ぬまで現役で働き続けるつもりではあるのです。
しかし、そこは不確定要素も強いので、今後何らかの形で老後資金を形成していかなければなりません。
あと個人事業主で、給与所得控除がないので、節税も考えていかないといけません。
退職所得控除の余りを有効活用!
そのように考えると、最初は単純に「4.iDecoに移管」を考えていたのですが、ちょっと待てよと。
原田の退職一時金は大した額ではないので、退職所得控除の枠(*2)が余ってるんですね。
ということはひとまず、残高を一時金として受け取って退職所得控除の余りを使ってから、改めてiDecoで掛金を支払えば、iDeco掛金の控除も受けられてダブルでいいんじゃね?
退職一時金でもらったお金と、iDecoで掛けるお金の間には、何ら関係性はないですからね。
退職所得控除の枠を意識的に作るということ
それと、退職所得控除の枠を作るという考え方も必要かと思います。
どういうことかというと、iDecoの場合、60歳以降に一時金として受け取ると、退職所得控除が使えるんですが、退職所得控除の計算期間=”掛金を支払っていた期間”となるんですね。
勤め人の場合は、勤めている期間=退職所得控除の計算期間になります。
しかし個人事業主の場合は、ボケーっとしていると、いざ何かしらの形で退職所得控除を使おうとしても、枠が無いケースがあり得るので、意識的に枠を作ってく必要があります。
つまり、将来の退職所得控除の枠のために、ちょっとずつでもいいからiDecoで掛金を支払続けるということです。
(*2)退職所得控除=勤務期間×40万円。ただし21年目以降は70万円。
まとめ
以上、原田のケースでは、基金残高を一時金として受け取った上で、iDecoに再投資するという結論に至りました。
もちろん、人によって加入している制度や勤務期間、退職一時金の額、現時点の年齢といった諸条件は千差万別ですので、必ずしも原田のケースが当てはまるとは限りません。
みなさんそれぞれが必要とする今のお金、近い将来のお金、老後のお金を踏まえた上で、ご利用は計画的に!
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