こんにちは原田です。
猫と学ぶ簿記超入門 第15話をお届けします。
今日は棚卸資産の払い出し単価についてご説明します。
棚卸資産の払い出し単価計算がきちんとできていないと、
売上総利益が適切に算定できません。
売上総利益が適切に算定できないと、
経営計画や予算が狂ってきてしまいます。
登場猫物と登場人物
原田会計の招きネコ、マネ
原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)
前回のお話
棚卸資産の評価って一口に言っても・・・
ひで:今日はー、そやなー、棚卸資産の話しよか。
マネ:棚卸資産?仕入の話とは別?
ひで:そう、別。
前回までの仕入の話っていうのは、
“仕入れるまで”のことしか説明してへんかったやろ?
商品を仕入れて、買掛金を払って、みたいな。
今日はそうじゃなくて、その後。
仕入れた商品の内、どれだけが損益に行って、
どれだけが棚卸資産として残るのかっていう話。
マネ:今までの流れで言うと、その”どれだけが”っていう部分が、
また一本道じゃなくて、いくつか選択肢があったりすんねんろ?
ひで:マネさんわかってきましたねぇ。
マネ:ほらなー。
棚卸資産残高と売上原価の関係
ひで:とりあえず細かい話する前に、
全体観を説明しとくな。
期首の棚卸資産残高800円、期中の仕入高1,000円、期末の棚卸資産残高XXX円
この状況を仕訳で表すと、
仕入 | 1,000円 | 繰越商品 | 1,000円 |
仕入 | 800円 | 買掛金 | 800円 |
繰越商品 | XXX円 | 仕入 | XXX円 |
となる。
ここまで大丈夫?
マネ:繰越商品っていうのは、貸借対照表でいうところの
商品勘定と同じやと思っといたらええっていう話やったっけ?
ひで:そうやな。あんまり深く考えへんでええよ。
つまり、期首にある棚卸資産残高800円を、
期中に仕入れた分と合わせて当期分の仕入として繰り入れて、
期末にある棚卸資産残高XXX円を貸借対照表に在庫として残すっていう一連の仕訳な。
ということは、この期の損益計算書に載ってくる売上原価はいくらになる?
マネ:えーと、800+1,000-XXX円やない?
ひで:そう、そういうこと。
ほんでこのうち、800円と1,000円はわかり切った数字やから、
今日の本題は、XXX円をいくらにするかっていう話な。
マネ:その計算方法がいくつもある、と。
ひで:さて、XXX円の出し方やけど、どうやって出すと思う?
マネ:う、うーん。とりあえず、何個あるかは数えんと始まらんわな?
ほんでその数に買った時の単価を掛けたらええんとちゃう?
ひで:うん、基本的な考え方はそれで〇。
まずは棚卸をして、何がいくつあるかっていうのを確定あかん。
実地棚卸についてはまた今度詳しく説明しよか。
そんで、その数えたのに単価を掛けるわけなんやけど、
商品の種類が一つやとしても、その単価って一通りじゃあないやんか?
マネ:そらそやわな。
買ったタイミングとかロットとかで単価変わってくるもんな。
ひで:そう、そういうことよ。どの単価を掛けるべきなんかっていうこと。
棚卸資産の評価方法
というわけで、その選択肢はこの6つ。
- 個別法
- 先入先出法
- 移動平均法
- 総平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
最初に全体観を表にしとくな。
4月の1ヶ月間の入出庫の概要と、
それぞれの評価方法での棚卸資産な。
個別法
ひで:これは、商品1個1個の値段を把握するやりかたな。
やから、実は棚卸→単価を掛けるっていう流れとはちゃうねん。
実務的に適用できる業種もわりかし限られてて、
不動産業とか、貴金属商とか、古物商とかな。
マネ:たしかに、むしろ1個1個管理せなあかん業種ばっかりやな。
ひで:というわけで、どの単価が何個残ってるかで棚卸資産の金額は変わってくる。
だから表では”?”な。
個別法の説明は以上。
先入先出法
ひで:この方法は、先に入庫したものから先に出庫していく、
っていう前提で期末の在庫を評価する方法。
マネ:まぁ、普通の考え方やんな?古いもんから売るやろ。
ひで:在庫の動きと帳簿の考え方が一致してるっていうのが、
このやり方のメリットやな。
表で見ると、期末には50個残ってるやろ?
ほんなら、この50個の単価っていうのは、
直前に仕入れた30個分が100円、残りの20個が120円。
だから@100×30+@120×20=5,400円。OK?
マネ:OK!
移動平均法
ひで:この方法は、入出庫がある度に倉庫の中がシャッフルされて、
どの単価の商品がでていったかわからへんていうような前提のやりかたな。
結構在庫の実情に見合った方法って言える
しかしこれがめんどくさい。
たぶん在庫管理システムを入れとかんと、
実務上は適用不可能やろな。
マネ:といいますと?
ひで:この方法は、出庫がある度に、
その時点での総在庫金額をその時点での在庫数量で割って、
その時点での平均単価で出庫したっていう風に考えるんよ。
別途表作ってみたから見てみて。
マネ:や、ややこしいが・・・
入出庫の都度都度、その時点の金額÷数量で単価を出してるな。
ひで:ややこしいやろ。
こんなん手作業でやってられんよ。
総平均法
ひで:おんなじ平均法でもこっちはめっちゃ簡単。
一定期間内に1回の入庫と1回の出庫があったっていう風に見るやり方。
マネ:”総”っていうてるから、いちいちやらんでええんやな?
ひで:そう、月間の総入庫金額を総入庫数量で割って単価を出す。
だから、一つの期間の間にせなあかん単価計算は1回だけ。
マネ:これは簡単や。
ひで:それがこの総平均法のメリット。
その代わり、月末になるまで在庫金額、
裏を返せば売上原価の額も把握できひんっていうことになるな。
これが総平均法のデメリット。
最終原価法
ひで:続いて最終原価法。
これは超簡単。在庫が何個残ってようが、
期間の最後に仕入れた時の単価で評価すんねん。
マネ:え、そんなん、単価の変動があったら
全然実情と違うことになるやんか。
ひで:そうやねん。
やからこの方法は”一般に公正妥当と認められた会計原則”、
つまりほんまの会計では使えへんことになってる。
そ・や・け・ど、実は税務の世界ではこの最終原価法が”基本”やねん。
マネ:は?全然実態を表してないのに?
ひで:そう、意味わからんやろ?
ただまぁ、中小企業の場合は、決算書を一般に公開するとかは無くて、
税金計算のためだけに決算してるっていうケースがほとんどやから、
中小企業実務では、最終原価法でやってる会社も多いな。
マネ:税金を計算するためには使っていいけど、
人に見せるための決算としては使ったらあかんっていうことか。
ほんま意味わからんな。
売価原価法
ひで:最後、売上原価法。これはちょっと特殊。
お勉強では、「スーパーとかの、超多品種の場合に使う」
って書いてあることが多いねんけど、
まぁ、要するに全体の原価率を先に決めといて、
期末に残ってる在庫の”売価”に原価率をかけて在庫金額にする方法やねん。
マネ:と、いうことは。
売価がちゃんと決まってる業種でないとあかんていうことやな。
あ、だからスーパーで使うんか。
ひで:ただまぁ、中小企業の実務的には、結構使ってる会社も・・・
マネ:なんで?しかも歯切れ悪いし。
ひで:税務上認められてるっていうのは、それはそうなんやけど、
やっぱり売価還元法って売価をどういう風に設定するかで、
原価率が簡単に変わってしまうわけやんか。
やから、普通の製造業が売価還元法使うのはほんまはやっぱり無理がある。
ただそこは、中小企業の経理っていうか原価計算能力と、
人手・手間の問題があるからな。
マネ:なるほどなー。本音と建前やな。
まとめ
ひで:というわけで、棚卸資産の評価方法の説明終わり。
別にどれを選択してもええねんけど、
自分の会社の実情と手間暇を考えて選ぶことやな。
(次回へ続く)
コメント