こんにちは原田です。
猫と学ぶ経営管理の第3話をお届けします。
前回は支払手形の利用が減っているというお話をしましたが、
今回は比較的最近創設された電子記録債権について、
そのメリットとデメリットについてご説明いたします。
登場猫物と登場人物
原田会計の招きネコ、マネ
原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)
でんさいってなんか良さそう
マネ:昨日の話やねんけどな、
あの後自分で支払手形について調べてみたんやわ。
そしたら、でんさいって言うのがちょいちょい出てきて、
どうも約束手形の代わりみたいな感じなんやけど、そうなん?
ひで:でんさいなぁ。
手形の代わりっちゃあ代わりなんやけど、
なかなか普及が進まんね。
マネ:なんで?調べてみたところ、
でんさいは収入印紙貼らんでいいから経費削減になるし、
紙の現物がないから無くしたり盗まれたりっていうリスクも無くて、
昨日聞いた手形のデメリットが無くて良いやん?
ひで:その理解は間違ってないねん。
ていうか、その前にそもそもでんさいってなんやねん?
っていうところを読者様のために説明しとくな。
マネ:ヒソヒソ(読者って誰?)
ひで:ヒソヒソ(そこは黙っとけ)
電子記録債権が支払手形の上位互換って本当?
まず、電子記録債権てなんやねんっていうところなんやけど、
でんさいネットっていう電子記録債権を扱う機関の説明を引用するとこうなる。
マネ:ほらやっぱり言うた通りやんかー。
“手形の問題点を克服した”っていう部分が、
昨日説明してくれた、手形のデメリット、
つまり、手間暇と金がかかる部分がなくなったっていうことやろ?
と思ったけど、一つ誤解があったわ。
ひで:ん?どんな?
マネ:なんかこう、従来の約束手形をパスワード付きのPDFで送るみたいな?
ほら、今まで紙の請求書を送ってたのを、
メールにPDF添付して送るみたいなんを想像してた。
ひで:あー、そういう誤解があるんかー。
そうやな、もしそういう誤解があるんなら、まったく違うな。
電子記録債権は電子上(ネットワーク上)の受払簿みたいなやつに、
いつ誰にいくら払いますっていうのを記載するっていうイメージやな。
マネ:なるほど。まぁ、でもそれにしたってやっぱり便利に感じるけど?
ひで:確かに便利やねん。
電子記録債権で”払う側”はさっき言うたみたいなメリットがあるし、
電子記録債権を受け取った側の事業者にもメリットがある。
1つは取り立て手続のために銀行に出向いたり、
現物を送ったりする必要が無いから時間とコストの節約になる。
もう1つは紙の約束手形と違って、分割して譲渡ができたりする。
マネ:おお、みんなHappyやんか。
ひで:だがしかし。普及しない。
マネ:なんでじゃー!
ひで:そりゃあ電子記録債権にもデメリットがあるからやわな。
電子記録債権を使うことのデメリット
電子記録債権の乱立
まず大きいデメリットの1つは電子記録債権が1種類じゃないっていうところやな。
マネ:といいますと?
ひで:今おれが”でんさい”って言う言葉と電子記録債権って言う言葉を、
敢えて分けて使ってることには気づいてた?
マネ:ん?確かに。電子記録債権=でんさいとちゃうんか?
ひで:ちゃうねん。
でんさいは確かに電子記録債権の中でも、
一番よく使われてるやつであることは間違いないんやけど、
電子記録債権自体は他にも何種類かある。
みずほの電ペイ、MUFJの電手、SMBCの支払手形削減サービス。
一応今はこの4つ。
マネ:ということはー、なんかあれやな、
最近の電子マネーとか、スマホ決済アプリが乱立してるんと似てるな。
ひで:あー、そうそう。同じやと思う。
他にも、ゲームの世界とかでも、
おれが子供の頃はスーファミ1台持ってれば、
ほぼ全てのゲームの話題についていけたのが、
最近は据え置き型はSwitchとPS4、
携帯ゲームは3DSとかPSvitaに加えて、
スマホゲームがゲームハードの一角になってしもてるから、
もはやどこを押さえといたらええのかよくわからん状況やねん。
なんか、そういうのに似てるな。
電子記録債権は相手の了承が必要
ひで:んで、もう一つの大きなデメリットが、
なんと電子記録債権は、
自分だけが使いたいからって言うて使えるもんやないねん。
マネ:ん?どういうこと?もう一回説明頼む。
ひで:えーと、自分が支払手形の振出しをやめて、
電子記録債権にしたいと思ったら、
支払先の事業者にも同じ電子記録債権を受け入れる手続きをしてもらわなあかんねん。
マネ:おっとそれはめんどくさい。
支払手形は、まぁ色々と会社間の事情はあるにせよ、
自分が振り出したいと思ったら振り出せるけど、
電子記録債権は相手の了承がいるってことか。
めっちゃハードル高いやん。
ひで:おれもそう思う。
まぁ、たぶん止むを得ん事情があったんやと思うけど、
それにしたって、ここが改善されへん限り、
電子記録債権が普及することはないと思うねんな。
電子記録債権が普及しないことがさらなるデメリットを産んでいる
それとこれに付随する他のハードルもあって、
普及がなかなか進まへんっていうことは、
電子記録債権を使ってる事業者にとっては逆に二度手間になるっていうことやん?
マネ:あー、そらそうやわな。
支払先って当然1社だけじゃないから、
電子記録債権での決済に対応してる支払先と、
そうでない支払先があったとしたら、
方や支払手形を今まで通り振り出して、
方や電子記録債権で支払い管理せなあかんようになるもんな。
ひで:その通り。
こういう状況やから、創設からもう10年以上たってるのに、
電子記録債権の振出し高は、いまだに支払手形の1/10にも達してへんねん。
マネ:え、全然やん。もう無理ちゃうん?
ひで:いや、ほんまそう。
こういうのって勢いでみんながガッとその流れに乗ってしまわな、
もうあとから徐々に普及っていうのは難しいと思うねん。
今の状況では、とてもじゃないけど、
お客さんに電子記録債権に切り替えましょうとは言い辛いわ。
ていうか、ほんまに便利なもんやったら、
自然にみんな切り替えていくはずやしな。
元々が国策やから、ほらこんな便利なサービス良いでしょ良いでしょ?って、
良いところばっかりをアピールして、
デメリットに目を向けへんかった結果がこれなんちゃうかな。
まさにプロダクトアウトの罠。
マネ:プロダクトアウトって何?
ひで:ん?長くなってきたしまた今度な。
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