【第9話】台数を維持しても雇用を維持できるとは限らないです

猫と学ぶ経営管理
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こんにちは原田です。

猫と学ぶ経営管理の第9話をお届けします。

理論的に考えると値引は悪です。

ですが、実際の営業の現場ではそれでもなお、

値引してでも件数(台数)をキープしたいという、

想いが先行してしまうことがあります。

その理由の一つは工場稼働率をキープしたいという考え方です。

原田会計の招きネコ、マネ

原田会計代表、公認会計士の原田(以下ひで)


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台数を維持したいのは工場の稼働率のため?

ひで:なぁなぁ、昨日の話の補足なんやけどな。

【第8話】売上件数が減っても、値引きするよりはマシ
猫と学ぶ経営管理の第8話をお届けします。 今回は、前回に引き続き値引に関するお話です。 前回はどのような価格戦略で、 売上アップを狙うかというお話でしたが、 今回は売上が下がりそうな時の値決めのお話です。

マネ:ん?どうしたん?

ひで:最近、”値引が悪”っていう話してるやんか?

マネ:うん。

ひで:それでもやっぱり納得できひん人っているんやわ。

マネ:どういうこと?値引きしてでも台数をキープしたいっていう人?

ひで:そう。

んで、なんでそう思わはるかっていうと、稼働率やねん。

マネ:稼働率て何?

ひで:稼働率っていうのは、工場とかで、

例えば機械とか人員の都合上、月当たり100台作れるところを、

実際何台作るかみたいな話。

100台作れるのに70台しか作らへんかったら70%。

マネ:ふんふん。ほんで?その稼働率が値引とどう関係あるん?

ひで:どういうことかっていうと、

もし値引をせずに、台数が減ってしまうと、

工場稼働率が下がってしまうやんか?

マネ:そらそうやわな。

ひで:そしたら経営者とか、営業部門の責任者はどう考えるか。

「件数(台数)が減ってしまうと、工場の稼働率が下がって、

工場の雇用を維持できなくなってしまう。」

となる。

マネ:ほう。なるほど。

ひで:なるほどって思う?

マネ:んー。なるほどっていうか、事実とちゃう?

ひで:ちゃうねんなー。冷静に考えてみ?

台数をキープしても雇用は維持できるとは限らない

ひで:確かに、経営者にとって雇用の維持っていうのは、

企業の社会的使命も相まって、

キープするべき目標の一つではあるんやけど、

“雇用が維持できない”状態ってじゃあどういう状態よ?

マネ:えーと、人を雇うのに必要なお金が無くなった状態?

ひで:そうそうそうそう。

ここで注意せなあかんのは、

必ずしも工場の仕事量が減ってしまうと、

雇用もそれに比例して減らさなあかん、

というわけではないっていうこと。

雇用が維持できなくなるのは、

あくまで雇用を維持するだけのお金がなくなった時な。

マネ:ちょっと待って待って、話がややこしくなってきた。

具体的に言うと、例えば去年は10台作って、売れました。

だけど、今年は8台しか作って、売れませんでしたっていう状況を考えると、

工場の仕事量は2割減になるやんか?

せやけど工場の人員は減らさんでも大丈夫って言うこと?

ひで:そうやで。昨日の例見てみ?


パターン1:台数キープパターン

売上 @80×10=800万円
売上原価(一台当たり変動費) @60×10=600万円
経費(固定費) 300万円
営業利益 ▲100万円

パターン2:台数減パターン

売上 @100×8=800万円
売上原価(一台当たり変動費) @60×8=480万円
経費(固定費) 300万円
営業利益 +20万円

ひで:工場でも営業でも、(正社員の)人件費っていうのは、

上の例で言うと、”経費(固定費)”に含まれるんやけど、

その人件費を払う元手はパターン1とパターン2でどう違う?

マネ:パターン1は売上800-変動費600で200万円、

パターン2は売上800-変動費480で320万円。

ひで:ということは、むしろ台数をキープしたパターン1の方が、

人件費の元手が少ない計算やん?

マネ:ほ、ほんまや。

つまり、パターン1はどういう状況かって言うと、

工場は一生懸命去年と同じだけ働いてんのに、

営業が値引して台数キープしてしもたもんやから、

給料減らされるみたいな話。

パターン2は工場稼働率は下がって8台しか作らんかったけど、

営業が価格を維持してくれたおかげで、

給料は減らされませんでした、みたいな理解でOK?

ひで:そう、そういうこと。

雇用を維持できるかどうかの境目は限界利益がキープできるか否か

ひで:この売上から変動費を引いた数値のことを、

管理会計の用語で”限界利益”っていうんやけど、

あくまでこの限界利益が多いか少ないかで、

どれだけの人を雇えるかが決まってくるわけよ。

裏を返せば、営業が台数を劇的に増やしたとしても、

それが値引によるもので、限界利益が増えてなかったら、

工場側は増産するのにヒーコラ言う割に給料は増えへんていうこと。

マネ:じゃあ、もし台数減って限界利益がキープできたら、

工場の人にとってはめっちゃホワイトな職場になるやん。

ひで:まぁ、工場の余った時間・人員を、

どう采配するかは経営者次第やけどな。

今マネが言うたみたいに、

「うちの工場はホワイトでっせ」っていうアピールに使うのか、

余った人手をブラブラさせとくのもなんやしっていうことで、

工場での技術力を活かして開発部隊とかに回ってもらうのか、

製品の中身のことをよくわかってる点を活かして営業に回ってもらうのか。

それとか、余った工場の稼働率で、他の会社から別の業務を受託したりとか。

色々考えようはあるやん?

マネ:確かに。経験者をみすみす辞めさせるのもめっちゃもったいないもんな。

ひで:というわけで、やっぱり値引してまで、

台数をキープする理由はないんやでっていう補足でした。

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