先日の記事にて、利益と資金は両方が増えていないといけないとご説明しました。
利益については、損益計算書が作成されているはずなので、それを見れば、利益が出ているか損失計上となっているか一目瞭然です(もちろん減価償却費が計上されていないなど、織り込むべき費用が織り込まれていないなどの会計上の不備があったら意味ないですよ)。
では、資金が”順当に”増加しているかというのは、どうやって見ればいいでしょうか。
キャッシュ・フロー計算書で資金の増減バランスを見る
答えの一つはキャッシュ・フロー計算書です。
キャッシュフロー計算書は、資金の増減をその理由毎に並べたもので、貸借対照表、損益計算書につぐ、第三の財務諸表です(これら3種を合わせて財務三表と言います)
先日の記事で書いた通り、銀行に利子を払い、株主に配当を払い、未来のための投資をして、なおかつ資金が以前より増えている状態が最も理想的な資金の動きなのですが、順を追って、具体的なキャッシュフロー計算書の中身を見ていきましょう。
※本稿ではキャッシュ・フロー計算書の作成方法自体には触れません。機会があればまた書きます。
まず営業キャッシュ・フローがプラスでないと駄目
とにもかくにも営業キャッシュ・フロー(以下営業CF)の額を見ましょう。
どう見るかというと、それがプラスなのかマイナスなのかです。
営業CFは通常の営業活動から生じた資金の増減額で、損益で言うところの営業利益にあたります。
これがプラスであることが企業の経営活動が正常に回っていることの大前提です。
もし営業CFがマイナスであったとすると、まずもってそれ(営業CF)の源泉となる営業利益が足りていないか、もしくは売掛金・買掛金・棚卸資産といったところで、”望ましくない”資金の動きがあることを表しています。
具体的には、売掛金の回収サイトが長すぎる、買掛金の支払いサイトが短すぎる、棚卸資産が急激に増加しているなどです。
とにかくここがプラスであること。
損益計算書上は利益が出ているのに、営業CFがマイナスということであれば必ずその原因を突き止めてください。
以下営業CFがプラスであることを前提に話を進めます。
設備投資はコンスタントにしておかなければ駄目
続いて投資活動によるキャッシュ・フロー(以下投資CF)を見てください。
ここもプラスかマイナスかを最初に見ましょう。
ここはマイナスであることが”正常”です。
もし投資CF全体がプラスであるならば、有形・無形固定資産の取得支出がマイナスであればとりあえずはOKです。
そしてより良いのは、有形・無形固定資産の取得支出の額が、営業CF中の”減価償却費”の額より大きいことです(減価償却費は過去の設備投資の目減り分と理解してください)。
有形無形固定資産の購入は、平たく言えば”設備投資”です。
そして設備投資は、その企業の将来の収益獲得のための資金拠出です。
企業の経営活動は通常、継続的な設備投資と、そこから産まれる収益の獲得というサイクルで成り立っています。
ですので、資金が無いからといって設備投資を止めてしまうという意思決定は、とりもなおさず将来の収益源を放棄しているのと同じと言えます。
従って投資CF、少なくとも有形無形固定資産の取得支出はマイナスであることが望ましいのです。
財務キャッシュ・フローはゆるやかーなマイナスが〇
3つ目の小項目である財務活動によるキャッシュ・フローを見てみましょう。
はい、プラスですかマイナスですか?
財務CFは新規の借入れと返済、株主への配当支払いなどから構成されていますが、ここは一概にプラスが良いとかマイナスが良いとかが言えません。
ではどういう見方をするかというと、少し乱暴な説明かもしれませんが、緩やかなマイナスが〇です。
急激な財務CFの増加は、過剰なファイナンス(借りすぎ)の可能性がありますし、急激な減少は、資金繰りの急速な悪化を示すからです。
最後に全体のバランスを見る
そしてまとめとして、営業CFが十分に出ていて、そこから投資CFと財務CFの減少を差し引いた”現金及び現金同等物”が増加していれば完璧です。
以上、超入門キャッシュ・フロー計算書の見方の解説でした。
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